ホテルにチェックインし、夕方までのんびりした後でまた外に出た。

陽は落ちかけているがまだまだ外は暑い。こんな日は旨いビールが飲めそうだった。

浜松駅歩いてすぐのところにある『浜松たんと』という居酒屋に行った。ここは事前に何人かの食べ歩き系YouTuberの動画で見た店だ。時間はまだ夕方５時前。さすがにちょっと早すぎるかな？店内俺１人とかだったらやだなー、などと思っていたが予想に反して店内は何人もの客で盛り上がってた。案内されたカウンターには両サイドに既に１人客が座っている。

瓶ビールとすぐ出てきそうなつまみを注文し、さりげなく店の様子を観察する。まだ５時にもなっていないというのに、仕事終わりらしいワイシャツ姿のグループがいくつもいた(一体この人たちは何時出勤なんだろう？)。

早速店員が瓶ビールを持ってくる。そしてこう尋ねてきた。

『当店の声かけをご存知ですか？』

『は、はい…。』

やはりきたか。何人かのYouTube動画で観たが、このの店には変わった声かけの決まりがある。グループ客の１人がグラスを片手に『やらまいか！』と叫んだあと、店員と残りのメンバーが『おいしょぉぉぉ！！』と唱和するというものだ。やらまいか、という言葉は浜松の方言で『やってやろうじゃないか』という意味らしい。

そして恐ろしいことに、この儀式は１人客の時も漏れなく行われるのだった。店員がビールをついでくれる。

多少の気恥ずかしさを覚えたが、ここで断ったり嫌々やったりするほど野暮なことはないだろう。俺は店内に響き渡る声で元気一杯に叫んだ。

『やらまいかぁぁぁぁ！！！』

『おいしょぉぉぉぉぉ！！！』

店員たちが一斉に答えてくれる。意外だったのは両サイドの客もグラスをクイッと上に掲げてくれたことだ。ただそれだけのことだがやけに嬉しかった。

料理は全て美味しかった。浜松餃子はキャベツが多目であっさりと食べやすく、おすすめだという鰹の刺身も絶品だった。遠州焼きという初めて耳にするメニューも注文したが、これはお好み焼きに刻んだたくあんが入っているものだった。コリコリとした歯触りがいいアクセントだ。

2杯目のハイボールを空にしたあとふと周りを見渡すと店内はいつの間にか満員になっていた。かなりの人気店のようだ。すっかり満足して会計を済ませる。腹も満たされて酔いもいい感じに回り、二軒目に行く必要はなさそうだった。

浜松餃子はかなり好みで、翌日も別の有名店に行った。うん、最初から食にステータス全降りすりゃよかったんだよ。うなぎ、さわやかのハンバーグ、ラーメン…まだまだ食べてみたいものはあったが少食の自分には胃袋が追い付かなかった。

また必ず行こう。

おわり