破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

10月下旬のとある休日明け、いつものように憂鬱な気分で出勤すると店内に入った瞬間声をかけられた。

『おぅ、おはよう』

不審に思いながら振り向くとそこには意外な顔があった。



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『キングなんだねぇ、偉いんだねぇ。売場先に見させてもらってるから』


『‥キ、キングオブえらいさん!?』

※キングオブえらいさん‥ブログ主の勤務店の担当エリアマネージャー。普段は関東の店に勤務。

一気に目が覚めた。

『え、急にどうされたんですか?』

『いや、昨日店の人にはちゃんと電話してるよ。今日行きますって』

なるほどそういうことだったのか。来たばかりでまだ報告を受けていなかった。そうと分かればすぐに準備をして売場に飛び出す。全く、出勤早々のキングオブえらいさんは心臓に悪い。

話はもちろん店舗改装の件だった。このところどんどん詳細が明らかになっている。と同時にこちらのやることも一気にギアが入ったように増えていった。注文、細かなレイアウト決め、各種業者とのやり取り‥それらに気を取られていくうちに通常業務はちっとも進まなくなった。売場は荒れる一方で、心は日に日に荒んでいった。色んなことを放ったらかしにしたまま毎日が過ぎていく。

一体いつになれば落ち着くのだろう、そんなことを考えて途方に暮れているとキングオブえらいさんが言った。

『破滅くんさ、今後やり取りすることも多くなっていくと思うんだよ。だからLINE交換ししとこうか』

そう言ってスマホを差し出した。キングオブえらいさんとLINEか‥気は進まなかったがこの状況では仕方がない。

『分かりました、こっちでQRコード読み取りますね』


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そして、俺のLINEの『友だち』一覧にキングオブえらいさんが追加されたのだった。

それにしてもLINEのこの表示方法はなんとかならないのだろうか。キングオブえらいさんが『友だち』なわけないだろう。せめて『友だち』、『仕事関係』などで分けられたらいいのだが。プライベートと仕事がぐちゃぐちゃに混ざっていくような感覚を覚え、俺はますます落ち着かなくなった。








先月からずっと仕事にかかりっきりでいる。

色々と考えることが多すぎて通常業務もちっとも進まないし、休みの日も常になんとなく落ち着かない気分でいる。

なんとか頭の中を空っぽにしたくて、部屋にいる時は大抵『ドラえもん』を読んでいた。本棚から適当に2.3冊取り出しパラパラと眺め続ける。当然全て知っているエピソードばかりなのだが、読んでいる間だけは心が少し安らぐのを感じた。

好みはやっぱり『大長編』より通常回のドラえもん。あくまで日常世界で起こるドタバタが楽しいのだ。

きっとこのコミックスたちは死ぬまで手放すことはないんじゃないだろうか、そんなふうに思う。

そういえば、次の映画は『海底鬼岩城』のリメイクらしい。原作コミックは昔から実家にあったのでよく覚えているのだが、テキオー灯で海の奥底を地上のように動くのび太たちにワクワクしたものだ。プランクトンで作られた食事がやたらと美味しそうだったこともよく覚えている。

だが、ラストだけは当時からあまり好きではない。誰かが犠牲になったおかげで他の皆は助かりました、たとえストーリー上仕方なかったとしてもこのパターンは素直に喜べない。

そのあたりもリメイクでどうなるか。

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10月某日。

本社からメールで『SNSの使い方を再度気をつけるように』とのお達しが届いていた。

どうやらどこかの系列店がとある内部情報を書いてしまったらしい。その投稿は指摘を受けた後すぐに消去されたため大事には至らなかったようだが、殆どの店がアカウントを持ち日々更新している現在の状況ではそんなこともあるのだろう。

店だけではなく個人でも同様だ。少し前にはどこかの社員が仕事の愚痴を毎日のように書きまくり、おまけにそれがどこの店舗かも明らかに分かるような内容だったため厳重注意を受けたのだという。なぜそんなことを書いてしまうのだろうか。いくらなんでも脇が甘すぎる、と思う。

ふと、このブログは大丈夫なのだろうかと思ってしまった。ネットの底の底で細々と続けている過疎ブログゆえ、『これアンタだろ?』などと言われたことはもちろん一度もない。社内にこのブログの存在を知っている人すらいないだろう。だが『誘い笑いのマサ』や『キングオブえらいさん』などは紛れもなく実在する人物であり、それにまつわるエピソードもほぼ全て真実を書いている。偶然だとしても近隣の社員が見れば誰のことかすぐに分かるだろう。万が一、ということもあるのかもしれない。

さすがに決定的にヤバいことは書かないようにはしているが、まあバレたらその時はその時だ。このブログを読んでいるのはほんの数人だと思うが、ある日突然消えていたら『ああ、バレやがったなあいつ』と思ってほしい。

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