破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2019年12月

今年のクリスマスも終わった。

怒濤のラッピングラッシュも一段落し、今日は久々の休日だ。いつもの喫茶店でコーヒーを飲みながらこの日記を書いている。

売上が下がっているせいか、今年のラッピングは昨年よりは少なく感じた。次から次へとラッピング依頼が舞い込み息継ぐヒマもなくただひたすらに品物を包んでいく‥そんな状況が遂に一度も訪れることなく終わってしまった。楽ではあるけれど、やはり一抹の寂しさを感じる。

まあ、特に大きなトラブルも無かったからよしとしようか。

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最近はサブスク解禁になったサザンを聴き直している。アルバムは何枚も持っているが、シングルのみ収録の曲が聴けるようになったのは本当にありがたい。曲数が多いので気の向くままに聴いているが、自分が好きなのはやはり20年くらい前、アルバムでいうと『さくら』のあたりまでだ。あの頃のサザンは最先端のサウンドを取り入れようと試行錯誤している感じがスリリングで良かった。『01messenger』、『PARADISE』‥、失敗作と言われた『YELLOW MAN』も個人的には良いと思う。

一方で『TSUNAMI』以降はどんどん桑田佳祐に対する興味が薄れていった。好きな曲ももちろんあるけれど、ほとんどは過去作のコピー&ペーストを繰り返してるようにしか思えないのだ。

何はともあれ、ポップス史上最大の天才であることは間違いないのだけれど。

幼少の頃の嫌な記憶はきれいさっぱり消えてしまうものなのだろうか。

自分の場合はそんなわけでもなく、こすっても取れないカサブタのようにいつまでも心にこびりついている。そして、いくら時間が経過してもある日ふとヒリヒリ痛みだすのだった。

小2の頃のとある休み時間、俺は教室で机と机に手を置いて足をブラブラさせていた。子供がよくやる暇潰しだが、調子に乗って足を高く上げすぎたのか、たまたま通りかかったA君の顔面に足先がヒットしてしまった。

A君は顔を抑えその場にうずくまり泣き出した。俺は必死に謝ったが、それを見ていた女担任は激怒し『あんた、今日の帰りの会でこの事を皆の前で謝罪しなさい!』と言う。

今思うとなんでわざわざ皆の前で?と思うが、恐らくその頃余計なことばかりしてよく注意されていたので、それらが積もり積もった結果かもしれない。そのあたりは記憶が曖昧だ。

そして帰りの会。憂鬱だ。皆の前に出て謝らなければいけない。しかし、どのタイミングで謝罪するのだろう?俺はその担任が『書店員くん、皆に言うことあるでしょ!』と話をふってくれると思っていた。

しかし、いつまでたってもその様子はない。『帰ったら手洗い、うがいを忘れないこと!』、『寄り道しないようにね!』‥担任はいつも通りのことを話し続け、こちらを見向きもしない。

『はい、じゃあさよーならー』『さよーならー』

結局何もないまま終わってしまった。あれ?先生あの件忘れたのかな?もしかして、自分から言い出さないといけなかったかな?

そんな思いも当然よぎったが、わざわざ会の途中で流れを止めてまで発言する勇気は自分にはなかった。何より、皆の前で注目集めながら謝罪するなんて嫌すぎた。『先生は、許してくれたんだろう。』そう思い込ませて自分も家に帰った。

翌日。すっかり謝罪の件を忘れて普段通りにしていると、女担任に呼び止められてひどく怒られた。『あんた、結局昨日の帰りの会で何も言わなかったでしょう!なんで黙ってるのよ!!』

そう、女担任は謝罪の件を忘れたわけもなく、あえて黙っておいてこちらがどうするかを試していたのだった。強い口調で責められながら、『じゃあその時言ってくれたらいいのに‥』とかなり嫌な気分になったことを今でも覚えている。

そして30年以上たった今でも何かのタイミングでふとこの一件を思い出す。小2のガキを試すような姑息な真似しやがって。つくづく嫌な女だったなあ。

出来ることなら『ナイトスクープ』に応募してその女のとこに問い詰めに行きたいくらいだ。まあ、やらないけど。どうせ向こうはきれいさっぱり忘れてることだろう。嫌な思いをさせたほうはいつだって覚えていないのだから。

ここ最近は風邪で体調を崩してしまっていた。

ブログを書くのも久しぶりだ。少し気を抜くとすぐこれだ。働きながら毎日更新している人は本当にすごいと思う。

婚活サイトも全く進展していない。少しプロフィール欄を追記して、それっきり。相手の条件を入力して出てきた人たちをつらつらと眺めてもいるが、今一つ気分が乗らない。そもそもどれだけの人が登録しているんだろう。何百人単位で色々な女性が表示されるが、気が遠くなってくる。

この中にピタリと気が合う人が1人くらいはいるのかもしれないけれど、果てしない、長い道のりに思えてしまう。

そんなある日、女性側からの『いいね!』が一件入っていた。よく分からないが、これは相手が自分に興味を持ったということなのだろうか。

プロフィール欄を確認すると、写真こそボンヤリして分かりにくいが、趣味の被りが多く話は合いそうではあった。しかし年齢欄の『36』という数字を見てどうにも躊躇ってしまう。

36歳ともなると向こうも焦りがあるだろう。ましてや子供が欲しいのならタイムリミットも近づいている年齢だ。メッセージを重ねて、会ってゆっくり距離を縮めて‥なんて悠長なことはやっていられない。下手したら相手の貴重な時間をドブに捨てさせることにもなる‥

そんなことを考えると、とてもじゃないが気軽に返信など出来るわけもなく、スルーするしかなかった。

12月8日(日)

12月になり客足が増えてきた。クリスマス用のラッピングが相次ぎ、その合間に品出しをこなす感じになってきて仕事がなかなか進まない。

本の問い合わせもいつもより多く、あれこれしているうちに時間は過ぎていった。結局やりたかったことの半分も出来なかったが、店が賑わうのはいいことだ。誰も来ないよりはよっぽどいい。

品出しをしている時、頭の中では色んな事を考えている。それは仕事の事だったり、全く関係ない事だったりもするのだが、昨日はなぜか『サカタ』のことをずっと思い出していた。

サカタ(仮名)は小学校の頃の同級生だった。いつも鼻水を垂らし、ニヤニヤ笑いを絶やさず、テストではいつも一桁の点数をとっていた。字が壊滅的に汚く、ひどく猫背で、誰かが何かを聞いても質問の意図を掴めずに不思議そうに首を捻っていた。

一言で言うと、『アホ』だった。アホと言えばサカタ、サカタと言えばアホ、それは学年の共通認識だった。けれどそれをからかわれたり、いじめられたりすることは一切無かった。サカタは優しいヤツだったのだ。

小3の頃だったか、休み時間にサカタとトイレに行った時のことだ。用を足して手を洗っていると、見知らぬ上級生が入ってきてサカタを見るとこう言った。

『お前はここじゃないだろ?お前は障害児学級だろ?』

一瞬空気が固まった気がした。いやいや、ええー?!どれだけデリカシーないの?急に出て来て第一声それ?知り合い?いや、知り合いでも充分失礼ですけど!

一瞬の沈黙のあと、そいつはあろうことか私のほうを見て『そうだよなあ!』と言ってきた。

いやいや、同意求めてきたよ!いや確かに薄々そんな気はしてたけど本人目の前だろうが!『ボクもそう思ってましてん!』とは言えねーよ!

友達なら怒るべきなのだろう。しかし体も大きな上級生は恐ろしく、出来ることといえば『いや‥違い‥ますけど‥』と弱々しく答えるだけだった。

教室に戻るまで気まずくて仕方がなかったのを今でも覚えている。

サカタはその後しばらくして母親の都合で転校していった。以来1度も会っていない。きっと優しい彼のことだからどこかで楽しくやっているだろう。ダウンロード

昨日、喫茶店から帰ると自分宛の葉書が届いていた。

差出人は大学時代の友人M君となっている。何だろうと思って見ると、お父様が亡くなられたことを伝える喪中ハガキだった。享年81とある。

意外と高齢だったんだな、と思いながらM君の結婚式のことを思い出してみる。ご両親には挨拶したはずだが顔はもう一切思い出せない。あと2年ほどで40歳、そりゃ親も亡くなるわけだ。自分の両親もいつまで生きられるんだろうか。

考えると暗くなる‥

M君にお悔やみのメールをすると返事はすぐに返ってきた。ずっと大病もせず元気すぎるほどだったが、先月急に自宅で倒れその日のうちに亡くなったらしい。『ここ数年はほとんど実家に帰ることもなくてね。もっと親孝行しとけば良かったよ』とメールは結ばれていた。

親孝行か‥。Mくん、君は結婚して可愛い子供がいて、少なくとも孫の顔を両親に見せることが出来たじゃないか。それだけでも立派な親孝行だよ。少なくとも俺みたいに実家にいつまでも寄生してロクに親と会話もしないようなゴミ息子に比べたら。

お父さんも、きっと幸せだったはずだよ。



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