破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2020年07月

Spotifyに登録してもう2年半ほどたつ。

古今東西のあらゆる音楽が月額料金だけで聴けることに感動し、最初は今まで敬遠してたようなジャンルも積極的に聴いていたが、すぐに聴き慣れたアーティストばかりになってしまった。

今はキンクスやらスライやらのオールドロックを好きなペースで聴いている。結局こういうのが一番落ち着く。

確かに毎週山のように配信される新譜を頑張って聴いていた頃もあった。中にはいいなと思える曲もあったけど、あまりにも数が多くて疲れてしまった。選択肢が多すぎるのも考えものだな、と思う。

肉体と共に感受性も年をとるのだろう。若手のバンドに心を動かされることは殆ど無くなった。根気よく聴いていけばびっくりするような名曲、名盤に出会うのかもしれないが、そこに至るまでの時間がもう面倒だ。どうやら自分も典型的な懐古人間になってしまったようだ。

久しぶりにブログを書いたけど、景気のいい話は一向に出てきそうにない。今の目標は一日一日を腐らずにちゃんと生きていくこと、それだけだ。

いつも通り売場で入荷した書籍の品出しをしていると、レジカウンター内の電話が鳴った。

『お電話ありがとうございます。◯◯書店です。』

受話器を取り、お決まりの言葉を口にする。言い終わらない内にくぐもった男性の声が聞こえてきた。

『すいません、◯◯警察の△△と申しますが』
『はい、何でしょうか・・?』

書店に警察から電話がかかってくる場合、ほとんどは万引き関連と相場は決まっている。今回も例外ではなかった。

話によると、ある男が窃盗で逮捕されたという。取り調べの中で、そいつが全国の書店で万引きを繰り返し、それらを中古書店に売りさばいては日銭を稼いでいたことを自供したそうだ。

そして、被害にあった書店のなかには自分の勤務店も含まれていたという・・。

今まで膨大な数の書籍を盗んでいるため、どこで何を盗ったのか、本人もよく覚えていないとのことだった。

各地で盗みを繰り返しながら日本縦断…まるでどこかのロードムービーのような話だ。一体その男はどこに向かっていたのだろうか。

一生塀の中にいとけよクソ野郎、心の中で毒づきながら、どこかその男の人生を羨ましく思う自分もいるのだった。

先月で登録していたマッチングアプリの有料期間が終わった。

結局、期間中に会ったのは1人だけだった。マッチングした人は他にも何人かいたが、どれもメッセージのやり取りが続かずフェイドアウトしていった。

その後もアプリ自体は消さずに残してはいるが、再び有料登録する予定は今のところない。また1からメッセージを重ね会って会話して…そんなパワーが全く残っていない。

今日は休みだった。日曜が休みなのは珍しいことだ。いつも通り喫茶店に行き、小一時間ほど滞在して帰ろうと店から出ると、通りを歩く大量の親子連れに出くわした。

母親と笑い合ったり、走り回って怒られたり、泣きわめいたり、色んな家族がいた。何となく1人で歩いている自分が恥ずかしくなり、普段とは別の道を選んで帰った。

自分は10年後も20年後も、ずっと1人のような気がしている。

この土日もかなり忙しかった。

普通の来客に加え、『鬼滅の刃』21巻の予約者が続々と買いに来られる。レジは常に稼働している状態が続いた。

このところ1人の購入する量がやたら多い。高価な専門書を何冊も買う方や、コミックの全巻まとめ買いが何回もあった。10万円が支給されて財布の紐も緩くなっているのだろうか。

落ち着くつつあった『キングダム』の既刊がまた売れている。Amazonプライムで映画が公開されたからか?『約束のネバーランド』新刊もクライマックスに向けてよく売れている。しかしジャンプは最終回ラッシュでこれからどうなるんだろう・・。

そんなことをぼんやり考えるながらコミック売場を整理していると、『アフロ田中』の新刊が目に入ってきた。

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表紙を見て驚いた。『アフロ田中、父親になってる!』

結婚したとこまでは知っていたけど子供が生まれていたのか。確か連載が始まった頃は俺は大学生だったはずだ。その頃は稲中にモロ影響受けたような童貞高校生たちのバカ漫画だったのに・・。

結婚して子供をつくる、それが人生の全てではないが、自分の現状と比べると漫画のキャラにすら引け目を感じざるを得なかった。そういえば彼女と同棲するとこくらいから自然と読まなくなっていったな。

7月3日、仕事終わり。

今日は『鬼滅の刃』21巻の発売日だった。開店前から長蛇の列が出来た前巻と比べると、今回はほとんど並ぶ人もなく静かなものだった。若干拍子抜けしたが、トラブルなく終わりほっとしている。店頭分はしっかり完売した。

最近改めて思うのだが、書店の仕事はやはり楽しい。

本を注文して、入荷したらしかるべき場所に並べて、売れなくなった本を返品して・・基本的にやっていることはこの繰り返しだ。地味だし退屈だと思う人もいるだろう。しかし自分で考えて売場を作り手入れしていくのは何者にも替えがたい静かな達成感がある。正直なところ面倒だと思うこともあるが、マメに手入れするとちゃんと売上に反映されてくるのだ。

給料は呆れるほど安く、仮に結婚したとしても共働きじゃないと暮らしていくのは不可能だろう。同期は皆とっくの昔に退職し、書店員よりも遥かに年収の高い仕事に転職していった。それでも今のところ自分はこの仕事を辞めるつもりはない。

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