破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2020年12月

またしても前回の更新から日が開いてしまった。来年はもっと頻繁に更新したい。毎日きっちり更新してる方々は本当に凄いと思う。

クリスマス商戦も終わり、ラッピングのラッシュに時間を取られることは減ったがまだまだ忙しい。今年は帰省せず家でゆっくり過ごす人も多いらしく、コミックや文庫のまとめ買いが続いている。早くも棚は傾きがちだ。もっとストックを用意しときゃ良かったと後悔している。

昨日は休みで久々に実家に帰った。朝から地元の友人Hと軽くお茶をして話した。クリスマスは家族でパーティーを行い、夜中に子供達の枕元にこっそりプレゼントを置いたそうだ。いいパパやってるんだな、と素直に嬉しくなった。

帰ってからは年賀状を今さらになって書いたり、実家の掃除を手伝ったりしている内に時間は過ぎていった。

大晦日も元日も仕事だ。ぼんやり正月番組を寝転んで眺めるなんて今回も出来そうにない。でもそれで良かったのかもしれない。働いていたらプライベートな幾つもの悩みなどはひとまず考えなくてすむから。

先日、いつものように店内で品出しをしている時のこと。

一組の親子の姿が目に入った。五歳くらいの男の子とその母親だ。男の子はそのあたりを駆け回ったり、地べたに横になったりを繰り返し、その度に母親から怒られていた。けれどもちっとも堪えることもなく、しばらくしたらまた同じようにはしゃぎまわっている。それどころか母親のことなど完全になめてかかっている感じだ。挙げ句、欲しい本を買ってほしい買ってほしいと泣き叫び始めた。

内心鬱陶しいなあ、さっさと帰らないかなと思いながら品出しを続けていた。

また少し時間が経った。レジが混み出したため自分もヘルプで入っていると、先程の親子が絵本を買いにやってきた。男の子をチラッと見るとどことなく満足げだ。母親も根負けして買ってあげることにしたのだろう。その表情に若干の苛立ちを覚えながら本をスキャンしていると、男の子がこちらの顔を見てこう言った。

『おじさん!おじさんだあ!!』

指を差しながら何回も連呼する。横にいる母親は『おじさんじゃないでしょ、お兄さんでしょ!』とフォローするものの、そんなことは気にもとめず『おじさんだよ!絶対おじさんだもん!!』の一点張りだ。

接客業をしていて見知らぬ子供に『おじさん』と言われることはこの日が初めてだった。もちろんショックだったが、仕方ないとは思う。1年後には四十路、どこからどう見ても立派な『おじさん』だ。少なくとも『お兄さん』では全くもってない。母親のほうのフォローも無理があるようで、気恥ずかしさを覚えてしまった。

しかし、何度もしつこくニヤニヤ笑いながら『おじさん、おじさ~ん』と連呼されると子供とはいえどこちらも腹が立ってくる。

こういう時、心の広い人なら『おじさんだよー。』などと優しく笑いかけたりするんだろうか。自分はもちろんそんな人間ではないので、そのガキの方など一切見ず、おじさん連呼にも一切答えることなく、いつもより早口で畳み掛けるように会計を終わらせたのだった。

マスクの中で『さっさと消えろクソガキが』と口だけ動かしながら。

まあでも、『ハゲ!ハゲー!』とか言われなかっただけでも良かったのかな。気を遣ってくれてたのかも。クソガキ、ありがとう!







クリスマスまで10日を切り、ラッピングの依頼が増えてきた。

次から次へと舞い込み、一度つかまるとレジ付近からしばらく脱出することが出来ない。毎年のことだが、この時期は普段の仕事が進まなくなる。

それでもラッピングを一つずつこなしている時間は無心になれるから嫌いではなかった。少なくともその間だけは余計なことを考えなくてすむ。

先月採用したアルバイトも少しずつ慣れてきているようだ。面接での感じの良さに即採用を決めた。いざ採ってみると、面接での元気はどこいったの?と思うくらい変わってしまうパターンもあるため注意して見ていたが、今回は大丈夫そうだ。長く続けてくれるといいのだが。

しかし改めて思うが面接は難しい。今回も何人もの応募者と会ったが、何を聞けばいいのか毎回分からなくなる。一応マニュアルはあり、質問も用意はされているのだが、大体みんな同じように答えるから判断のしようがないのだ。

例えば『なぜ、書店のアルバイトに募集しましたか?』

定番の質問だが、これには9割9分の人が『本が好きで、本に囲まれた職場で働きたいと思いました。』と答える。そりゃそうだろう。そもそもそれ以外の回答があるのだろうか。

『亡くなった父親の遺言が書店でバイトをしろ、ということでした。なので今回応募させていただきました!』なんて奴はいないだろう。もしいたら即採用すると思うが。

あとは『自分の長所と短所は何ですか?』、『周りはあなたの印象をどんな風に言いますか?』、『中学高校で頑張った経験を教えて下さい』等々。

自分で質問しながら内心『これで何がわかるんだよ』と思ってしまう。もちろん皆それなりに良さげな回答をするのだが、面接で印象良く見せるなんていくらでも出来る。今までどれだけ採用してガッカリパターンがあったか。こんな奴採用するんじゃなかった、と思ったことも一度や二度ではない。

逆に、不採用にした多くの人達の中にもダイヤの原石のような逸材が何人もいたのだろう。要するに自分には人を見る目がないのだ。

もう何年もこうやって面接をしているが、いつまでも確信は持てずにいる。『申し訳ありません』と心の中で呟きながら不採用通知をポストに入れ、履歴書の写真にハサミを入れる。もう二度と会わないであろうその顔が切り刻まれていく時、なぜだか妙な快感を覚えて毎回少し笑ってしまう。

今月4日は『鬼滅の刃』最終巻の発売日だった。

開店と同時に多数の来客があり、瞬く間に在庫ははけていった。皆競うように商品の置かれたワゴンの中に手を突っ込んでいく。店頭分は午前中で完売、午後からも予約していた人たちがひっきりなしに訪れ、一日中レジが途切れることはなかった。

結局その日は早朝から閉店まで働き続け、疲れきってしまった。この1年くらい鬼滅にはふり回されっぱなしだったと思う。もうこんなメガヒットはしばらく出てこないとも思ってはいるが、最近になって『呪術迴戦』の勢いがとんでもないことになっている。来年はひょっとしたら…

しかし、全盛期と比べると部数はだいぶ減ったとはいえ、つくづくジャンプの底力は凄いと思う。ここ1~2年で人気連載が次々と終わった。『鬼滅』、『ハイキュー!!』、『銀魂』、『ネバーランド』…。『チェンソーマン』も次の号で終わるそうだ。

心配の声もあがっているそうだが、きっとまた『鬼滅』のような新たなヒット作が生まれていくのだろう。

個人的には『チェンソーマン』は何年かぶりにジャンプで大ハマりした漫画だった。作者の頭の中は一体どうなっているんだろう?

もう12月か。
今年はコロナのこともあってかいつにもまして時間が過ぎるのが早かった気がする。年明け、婚活サイトでZさんと頻繁にメッセージのやり取りをしていたのもつい最近の事のようだ。

結局婚活が上手くいくこともなく、今年も独身のまま終わってしまった。Zさんは今頃どうしているだろう。きっとその後いい人とめぐりあってエロいセックスでもしているに違いない。

もう考えても仕方のないことだ。一生会わない人、それは死んだと同意である。彼女とは一緒に写真を撮ることもなかったから、そのうち顔も思い出せないくらいになるんだろう。

それでいい。

変わりばえしない日々での唯一の変化といえば、実家を出て一人暮らしを始めたことだった。もう2ヶ月余りが過ぎた。必要なものはほぼ買い揃えて、生活のリズムも大分固まってきた。

この2ヶ月は休みの度に近所のスーパーや100均に立ち寄り、生活用品を買い足した。便座カバー、靴べら、サランラップを収納するラック、不足している調味料、ジップロック…一つ一つは地味だが、買う度に生活の質が何ミリか上昇するようで、それがちょっとした喜びではあった。

あとは残るのはオーディオだ。現在はJBL小さなBluetoothスピーカーをスマホで接続して使っているが、やはり音が全くもって物足りない。出費が痛いがちゃんとしたセットを買おう。

そんな感じで毎日は過ぎていく。特に大きな喜びやイベントがあるわけでもない、華やかさとは無縁な日々。でも今はそれで充分だ。特別なものは何もいらない。出来ることなら、少しでも心穏やかに過ごさせてほしいと願うのみ。

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