破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2021年04月

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最近はスピッツの『フェイクファー』を聴くことが多い。

季節ごとに聴きたくなるアルバムというのは確かにあって、春先には決まってこればかり聴いている。ジャケットのイメージ通り、暖かな日差しが優しく降り注ぐような内容のアルバムだ。アコギの優しい音色に癒される。かと思えばハードロック調の曲が突然現れたりして、メリハリも効いている。スピッツは基本的にダメなアルバムなど1枚もないが、そんな中でも特に好きな作品。

このアルバムを聴くと初めて東京に行ったときのことを思い出す。

確かこれがリリースされたのが1998年の3月だったか。東京の大学に通っていた兄の卒業式を見に行くために家族で上京したのだった。その時に渋谷のタワーレコードで大々的に展開されていたのを今でもよく覚えている。

初めての東京に胸が高鳴ったこと、通りを歩く人の多さに驚いたこと、学生たちでごった返す大学があまりにもキラキラして眩しかったこと、車窓からの景色が新鮮でずっと眺めていたこと…『フェイクファー』を聴いていると色々な記憶が甦ってくる。

なんとなくブログを更新する気分にもならず、そうこうしているうちに3月も終わってしまった。

その間に学生バイトが卒業し、新人バイトはうつ病を発症しドロップアウトしていった。一度に数人が抜けたため随分と寂しくなったシフト表を見ながら、またバイト募集を再開するか決めかねている。

自分はといえば相変わらず気分は低空飛行のまま、その日その日をやっとの思いでこなしている。

まだまだ元気だった若い頃は、4月になれば何か新しいことが始まりそうな気がして毎日ワクワクしながら過ごしていたものだ。エレファントカシマシ『四月の風』なんかをウォークマンで聴きながら帰路についたことなどを思い出す。そんな心がはやるような気持ちもここ数年はもう一切感じることはない。

3月は何があっただろうか。沈んだままの気分を少しでも解消するために近場に小旅行に出掛けた。緊急事態宣言が解除された後に友達と飲みに出掛けた。別の友達とはLINEのちょっとした言い争いで縁を切った・・。

いつも通り、大したことは何一つなかった。もし今『全く別の他人になって人生をやり直せるボタン』が目の前に現れたらどうするだろう。少し考えた後に押してしまうかもしれない。

もちろんそんなボタンはあるはずもなく、自分のままで死ぬまでやっていくしかないんだが。

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