破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2022年05月

※12年前の話です。


思いを告げてからもAさんとのメールのやり取りは以前と変わらず続いていた。たまに誘われて飲みに行ったり、遊びに行ったりすることもあったが特にこないだの出来事が話題になることもない。自分の告白などまるで無かったかのような雰囲気だ。どう思っているのか何度も聞いてみようかと思ったが、白黒はっきりつけられて完全終了するのが怖いから黙っていた。

これはもう脈なしだろうか。半ばそう思いながらも諦めきれない自分もいて、2つの感情に板挟みになりながら毎日を過ごしていた。

エリアマネージャー(以下AM)に話があるとメールをしたのはそんな時だった。アドバイスなどは別にいらない。この悶々とした気持ちをひとまず誰かに聞いてほしかった。『いいよ!飲みにいこうか!』とすぐ返信があり、数日後会うことが決まった。

そして当日。居酒屋で落ち合いしばらくとりとめのない話をした後で本題に入る。実は最近好きな人がいて‥と切り出すと恋愛話が好きなAMは『いいねぇ!』と身を乗り出してきた。

Aさんの名前は出さず、ざっくりとここまでの流れを説明する。

『なるほど、飲みとか遊びに行ったりは二人なの?』
『はい、二人で行ってます。』
『おー、いい感じだと思うけどなー。』
『まあ、そこから進展しないといいますか‥』

なるほどなあ、とまた言いながらAMはコーラのおかわりを店員に告げた。酒が一滴も飲めないAMは飲みに行っても常にソフトドリンクを頼んでいた。

『まあでも、楽しそうでいいじゃない』
AMの穏やかな笑みを見て、やっぱりこの人に話して良かったなと思った。変に茶化したり、頼んでもいないのに余計なアドバイスをしてきたりする人も中にはいる。大事な話をするには相手をよく見極めないといけない。

新しいコーラを一口飲んだAMが口を開いた。『それって仕事繋がりの人?もしかして俺も知ってる?』

AMとAさんは過去に同じ店で働いていたことがある。あえて名前は出さずにいたが、まあ別にこの人ならいいかと言ってみることにした。

『まあ、そうですね。あんまり言わないでほしいんですけどAさんなんですよ。』

そう告げた時、なぜか一瞬だけAMの顔から表情が消えたように見えた。

つづく

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ゴールデンウィークも終わった5月の中頃、連休がとれたのでふらっと高松へ行ってきた。

仕事で来たことはあるが旅行では初めてだ。いつも通りほとんど計画はたてないまま新幹線に乗った。

昼前に到着。まだ腹は減っていなかったので駅から少し南下すると商店街にたどり着いた。ここはアーケードになっており、歩いても歩いても一向に終点が見えてこない。後で知ったのだが2.7キロと日本一長いアーケードだそうだ。

平日の昼下がり、人はそれほど多くない。目に入る店を眺めたり途中喫茶店で少し休憩したり。無目的に歩くだけでも良い気分転換になる。ガイドブックに載るような観光名所には元々あまり興味がない。城や寺院仏閣は毎回綺麗にスルーしているが、いつか良さが理解できる時が来るのだろうか。

初日はそんな感じで街をうろつき、菊池寛記念館でぼんやりして、夜は居酒屋でひとしきり酒を飲んだ。ホテルに着いたらベッドに倒れこみそのまま寝てしまった。

翌朝はアーケード商店街からほど近くにあった『本屋 ルヌガンガ』に行った。ここだけは旅行前から行こうと決めていた場所だ。Twitterでの書籍のチョイスが毎回いい感じで一度は訪ねてみたいと思っていた。

10時の開店早々に入店すると、『いらっしゃいませ!』と女性店主の元気な声がすぐに飛び込んできた。小学校の教室くらいの規模だろうか。こじんまりしているが、ジャンルごとに綺麗に陳列された本は棚ごとにまとまりがあり、一冊一冊ちゃんと選書した上で並べてるんだなとすぐ分かるものだった。

ひとしきり見て、文庫を2冊ほど購入。レジに行くと店主が気さくに話しかけてくれた。こういった個人経営の書店は気難しい人の場合も正直多いのだが、快活でものすごく感じがいい。書店員であることを告げると『自分の店でも買えるのに旅の記念に買ってくださったんですね!』と言ってもらえた。

毎日のように通う常連も多いそうだがそれも納得だ。こんな店が近所にあったらきっと自分もそうなるだろう。素敵なお店だった。またいつか、必ず行こう。

5月24日(火)

休日。

先日の最悪な出来事がいまだに尾を引いている。こんなにもムカついたことは久しくなかった。さっさと忘れてしまいたい。

ネタ話として消化出来る時がきたらここに逐一書いてやろうと思う。世の中には想像力に欠けた人間が存在することを痛感させられた出来事だった。

気晴らしにAmazonプライムのおすすめに出てきた『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』という映画を観た。

売れないバンドマンが彼女にも捨てられ、失意の中書いた曲がひょんなことからネットで大バズリ。その曲を偶然聴いた彼女が感動し、新しい恋人の誘いもふりきりバンドマンの元に戻っていく・・。

めでたしめでたし。

おとぎ話かよ、しょうもない。他の映画にすりゃ良かったと後悔した。

現実でもこんなことがあればどんなに良かっただろう。つまんない映画を観たおかげでまた元彼女のことを思い出してしまった。

こんな自分にも好きになってくれる人が今まで何人かはいた。けれどいつしか皆去っていった。

なぜみんないなくなってしまったんだろう?
答は簡単。側にいてくれる時に大事にしなかったから。

そんなことばかり繰り返して、自分は今日も一人だ。
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5月22日(日)

数年に一回レベルのめちゃくちゃに腹が立つ事があり完全に平静を失っている。

顛末をこと細かくこのブログにぶちまけてやりたいが、さすがに醜いから止めておこう。

前回までの下手くそな小説くずれのシリーズはまた気力が出てきたら書くとしようか。

飲みに行った何度目かの帰り道でAさんに告白した。

たまたま通りかかった公園の前で実はすごく好きなんです、と伝えると『ええ、分かってましたよ』と涼しい顔で言う。そしてこう続けた。

『私と付き合いたいんですか?』

そう言われて答えに窮してしまった。好きだという気持ちが先走り過ぎて、伝えることだけを考えていた自分にはその先のビジョンが無かった。

果たして俺はこの人と付き合いたいんだろうか?

色々と話してどんどんAさんに惹かれていく一方で、どこか彼女は見えない壁を作っているような気がしていた。触れようとするとサラリと逃げていく魚のように、心の奥底で何を考えているのかちっとも分からない。

この掴めなさはどこから来るんだろう?

言葉が見つからず口ごもっていると、Aさんは『付き合うとか、あんまり興味ないんですよね、私。』と言った。

そんな感じでその日はうやむやに終わってしまった。

これからどうしていこうか、悶々と一人思い悩む毎日に耐えきれなくなった自分は、たまらずエリアマネージャーにメールをしたのだった。

『ちょっと相談したいことがあるんです。飲みに付き合ってもらえませんか?』

つづく


今日のひとこと
『Aさんのイメージは、尾野真千子あたりやでぇ!!』

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