先日ブログに書いた連勤の真っ最中の12月某日、とある飲み会に誘われて行ってきた。
休日出勤が夕方頃に終わり、事務所で帰り支度をしていると知り合いのM店長からLINEが届いた。開いてみると、系列店の社員数人で飲むからよかったら来ないかと書かれている。
珍しいこともあるものだと思った。仕事関係の人間から飲み会に誘われるなど滅多にないことだ。ましてやこのコロナ禍になってからそういった機会はますます減っている。LINEに書かれている場所を確認すると行けない距離ではなかった。かなり疲れていたのでどうしようか少し迷ったが、これを逃すと次はおそらく無いだろうと思い向かうことにした。
『OKです、今から向かいますね。』
指定された場所は某駅前の大衆居酒屋だった。店に入るとすぐそばのテーブルにいたM店長が笑顔でこちらに手を振っているのが見えた。メンバーは他にK店長、A店の女性社員がいる。いずれも他店のヘルプなどで挨拶を交わすくらいの関係だ。うまく話せるかやや不安を覚えたが、気の良さそうな人たちですぐにそんなことは気にならなくなった。
一通り仕事の愚痴を言い合った後は、少しずつ話がそれ以外の方向へ向かい出した。中でも女性社員の話が印象的だった。なんでも彼女は数ヵ月前に10年近く付き合った恋人と別れたのだという。他の二人もそのことは初耳らしく驚いていた。
『えー、10年も付き合ったのになんで?』M店長が言う。
『それなんですけど聞いてくださいよ!』日本酒をグッと一息に呷った後で女性社員は言った。既に彼女はビールを4杯ほど飲んでいる。相当飲める口なのだろうか、顔色はちっとも変わっていない。
女性社員の話はこんな感じだった。
恋人とは学生の頃から10年近く付き合い、結婚の約束もしていたという。二人は男の実家に行き、そこで両親に結婚する意思を伝えることに決めた。しかし、当日いざ実家に着き、食事をしながらあれこれ会話をしていても男のほうはなかなか話を切り出そうとしない。その日は泊まることになっていたため、女性社員は翌日に言ってくれるのかな、と思って眠ったそうだ。
それなのに次の日になっても一向に男が話を切り出そうとしない。そうこうしているうちに出発の時間が来てしまった。『また来てくださいね!』と笑顔の両親たちに見送られてモヤモヤしながら家を出たという。
駅までの道すがら、女性社員はたまりかねて男に詰めよった。『ちょっと!ずっと待ってたのになんで話をしないのよ!』
すると、男はうつむきがちにこう言ったという。
『ごめん、言うつもりだったんだけどいざその場に直面したらなんか違うな、と思ってしまって…。』
『はぁぁぁ?!!なんか違うって何なのよそれはぁぁ!!?』
そこでブチギレた彼女は男を置いて一人で帰ってきてしまったそうだ。
『それから一度も会ってませんね。なんか違うと思ったのならもうお別れしましょう、って後からLINEして、向こうも分かりましたって返事きて、それっきりです』
女子社員が一通り話し終わるとM店長たちは『ひでえー!!』と笑い声をあげた。彼女もすっかり吹っ切れているのか、まるでおもしろエピソードを披露するかのように淀みがない。きっと色んなところで同じエピソードを何度も話しているんじゃないだろうか。話の始まりからオチまでまるで芸人のエピソードトークのように完成されている。
それにしても10年付き合ってその終わり方は何とも寂しい気もするし、そこまでいく前になんとかならなかったのかとも思う。皆は口々に男のほうを責めていたが、自分は『何か違うな』と思ってしまった気持ちもなんとなく分かる気がしていた。
結局三時間くらいその店にいたのだろうか。疲れてはいたが、何度も大笑いして楽しい時間だった。

休日出勤が夕方頃に終わり、事務所で帰り支度をしていると知り合いのM店長からLINEが届いた。開いてみると、系列店の社員数人で飲むからよかったら来ないかと書かれている。
珍しいこともあるものだと思った。仕事関係の人間から飲み会に誘われるなど滅多にないことだ。ましてやこのコロナ禍になってからそういった機会はますます減っている。LINEに書かれている場所を確認すると行けない距離ではなかった。かなり疲れていたのでどうしようか少し迷ったが、これを逃すと次はおそらく無いだろうと思い向かうことにした。
『OKです、今から向かいますね。』
指定された場所は某駅前の大衆居酒屋だった。店に入るとすぐそばのテーブルにいたM店長が笑顔でこちらに手を振っているのが見えた。メンバーは他にK店長、A店の女性社員がいる。いずれも他店のヘルプなどで挨拶を交わすくらいの関係だ。うまく話せるかやや不安を覚えたが、気の良さそうな人たちですぐにそんなことは気にならなくなった。
一通り仕事の愚痴を言い合った後は、少しずつ話がそれ以外の方向へ向かい出した。中でも女性社員の話が印象的だった。なんでも彼女は数ヵ月前に10年近く付き合った恋人と別れたのだという。他の二人もそのことは初耳らしく驚いていた。
『えー、10年も付き合ったのになんで?』M店長が言う。
『それなんですけど聞いてくださいよ!』日本酒をグッと一息に呷った後で女性社員は言った。既に彼女はビールを4杯ほど飲んでいる。相当飲める口なのだろうか、顔色はちっとも変わっていない。
女性社員の話はこんな感じだった。
恋人とは学生の頃から10年近く付き合い、結婚の約束もしていたという。二人は男の実家に行き、そこで両親に結婚する意思を伝えることに決めた。しかし、当日いざ実家に着き、食事をしながらあれこれ会話をしていても男のほうはなかなか話を切り出そうとしない。その日は泊まることになっていたため、女性社員は翌日に言ってくれるのかな、と思って眠ったそうだ。
それなのに次の日になっても一向に男が話を切り出そうとしない。そうこうしているうちに出発の時間が来てしまった。『また来てくださいね!』と笑顔の両親たちに見送られてモヤモヤしながら家を出たという。
駅までの道すがら、女性社員はたまりかねて男に詰めよった。『ちょっと!ずっと待ってたのになんで話をしないのよ!』
すると、男はうつむきがちにこう言ったという。
『ごめん、言うつもりだったんだけどいざその場に直面したらなんか違うな、と思ってしまって…。』
『はぁぁぁ?!!なんか違うって何なのよそれはぁぁ!!?』
そこでブチギレた彼女は男を置いて一人で帰ってきてしまったそうだ。
『それから一度も会ってませんね。なんか違うと思ったのならもうお別れしましょう、って後からLINEして、向こうも分かりましたって返事きて、それっきりです』
女子社員が一通り話し終わるとM店長たちは『ひでえー!!』と笑い声をあげた。彼女もすっかり吹っ切れているのか、まるでおもしろエピソードを披露するかのように淀みがない。きっと色んなところで同じエピソードを何度も話しているんじゃないだろうか。話の始まりからオチまでまるで芸人のエピソードトークのように完成されている。
それにしても10年付き合ってその終わり方は何とも寂しい気もするし、そこまでいく前になんとかならなかったのかとも思う。皆は口々に男のほうを責めていたが、自分は『何か違うな』と思ってしまった気持ちもなんとなく分かる気がしていた。
結局三時間くらいその店にいたのだろうか。疲れてはいたが、何度も大笑いして楽しい時間だった。



