破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2023年01月

1月30日(月)

布団から出るのが耐えられないくらいの寒さ。暖房を全開にして、部屋をある程度暖めてからやっとの思いで起き上がり支度をする。きっと今月は電気代もガス代もアホ高いのだろう。分かってはいてももはやこの寒さではやむを得ない。

今日も売上は惨憺たるものだった。この寒波で皆足が遠退いてしまっているのだろうか。終日レジが混むこともなく、粛々と溜まった仕事をこなし続けた。

人の少ない店内で黙々と作業をしているとつい物思いに耽ってしまう。普段はあまり触る時間のない専門書の棚をいじりながら、ふと年老いた両親のことが頭に浮かんだ。

いつからだろうか?父親とまともに口を利かなくなったのは。

実家に帰るのは大抵休みの前日の夜だ。そこで夕飯を食べながらビールを飲むのがいつものパターンだった。すると毎回きまって二階から父親が降りてくる。その足音が聞こえてくると若干の緊張を覚えるのもいつもの流れだった。

『おう、お帰り。』

『はい、どうも』その言葉に答えながら軽く会釈を返す。

これでやり取りは終了だ。その他に何か言葉を交わすことは一切ない。父親はおずおずといった感じでまた二階に戻っていく。

日中もほとんど顔を合わすことはない。どちらかがリビングにいる時はもう一人は自分の部屋で過ごす。そのパターンがいつからか定着してしまった。

どうしてここまでこじれてしまったのか。その要因を書き出すと長くなるのでやめておくが、根底にはやはり引きこもりの姉の存在があるのは間違いない。

会釈を返した後、横目で父親のほうを見た。久しぶりにしっかりと見たその姿はもう完全にお爺さんだった。去年の秋で80になっているはずだ。数年前に大きな病気をして丸々とした体は随分小さくなってしまった。今はまだある程度は元気そうだが、正直なところいつどうなってもおかしくない。

今の関係のまま父親が死んだら、俺はきっと後悔するのだろう。

そこまで考えたところで、棚をいじる手が止まった。

結局、こんな状況にまで持っていったのも全て自分だろう。話しかけられても無視して、顔を合わせたくないから部屋に閉じ籠って、一方的に拒絶していった結果が今なのだ。俺はいつだってそうだった。合わないとか嫌いとか少しでも思ったら最後、向き合おうと努力することはせずひたすら距離を取り、二度と歩み寄らない。そうやって今まで何人縁を切っていっただろう。

また同じことを繰り返すのか。

作業が手につかなくなり、棚の前でしばらく立ち尽くしていた。周囲に人影はなく、インストの軽薄なBGMだけがずっと鳴り続けている。

急ごう、もう残り時間は少ない。

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あいかわらず神メンバーたちの背中を追いかけるだけの毎日だが、少しは嬉しいこともあった。

1月はまだ終わっていないのだが、現時点で歴代最高の月間アクセス・訪問者数を達成したのだ。こまめに更新を重ねたのが良かったのかもしれない。

ここから更に勢いをつけて神メンバー入りを果たしたいところだが、さてどうなるか。あの人たちは本当に手強いから簡単にはいかないだろう。まあ、地道に続けていこうか。

ひとまず、つたないこのブログを少しでも読んでいただいた方全てにお礼を言いたいです。

ありがとうございました。

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歴代最高アクセスをお祝いするために地元の友人たちも駆け付けてくれた。

今月の中旬頃、地元の友人『モリオ』(仮名)と飲みに行くことになっていた。


元々その日は実家に帰ろうと思っていた。せっかく帰るのなら飲みに行きたいな、と思いモリオに声をかけると向こうもたまたま休みだったのである。

店は特に決めていなかったが、無性に焼き鳥が食べたかった。モリオにいい店を知らないかLINEすると、『やっぱり信長じゃないか?』と言う。

信長(仮名)とは、地元のA駅前にあるチェーン系居酒屋で、モリオの住むマンションからは歩いて5分くらいだ。チェーンとはいえ、メインの焼き鳥は味が良く店はいつ行っても大勢の客で賑わっている。モリオは特にここの焼き鳥が好きだった。

『やっぱ信長しかないか!まあ、うまいもんなぁ!!』俺は返した。ここでLINEは別の話題に移り、店をどこにするかはぼんやりとしたまま流れてしまった。

それから数日がたち、飲みの約束の前日になった。そろそろ店を正式に決めてモリオに連絡しなければいけない。ところがある事情で実家に帰る予定が無しになってしまった。

『参ったなあ…。』正直なところ、実家に帰らないのならわざわざ交通費を使ってA駅まで行きたくはない。けれど飲みには行きたい。

考えた末、B駅がいいんじゃないかと思った。B駅は自分のアパートとモリオのマンションのほぼ中間あたりに位置している。これならモリオにとってもそこまで負担ではないだろう。

『明日なんだがB駅周辺でもいい?』店は今から見当をつけるとして、まずモリオにLINEする。

しかし、休憩に入りスマホを見ると思いもよらない返信が送られてきていた。

『いやいや、こないだ信長しかないって言ってたんじゃないの?あの流れなら誰でもそう思うよな?ちょっと自分勝手なんじゃないか。お前は前からそういうところがあるぞ』

明らかに怒っている。信長を話題にしているトーク部分がご丁寧にスクショして貼り付けられていた。

これにはカチンときた。確かに場所を急に変更するのはこちらが悪いのかもしれない。しかしあの時点で店は正式に決まったわけでもないし、何よりそんなに怒ることか?『悪いけど実家帰る予定なくなったからさ、B駅でもいい?』とでも言えばよかったか?

『ああ、めんどくせぇなあ!』これ以上LINEでやりあうのも鬱陶しいので俺は直接電話をかけた。

『おう』明らかに不機嫌そうなモリオの声が聞こえた。
『いや、LINEでも書いたけどあの前置きがあれば誰だって信長だと思うだろ?前置きさえなければいい話なんだよ。俺は完全に秋吉の口になってるんだよ。だから急にB駅って言われてちょっと腹立ったんだよな。別にぶちきれてるとかじゃないぞ』

『例えるなら…』モリオは続けた。『寿司の気分でいたら急に焼肉屋連れていかれるような気分かな』

どっちもウマいじゃねぇかよと言いたいのをぐっと堪える。しかしここでおいそれと引き下がるのもしゃくだった。

『じゃあ俺も例えるなら…』今度は俺の番だ。

『つまりはこういうことだろ?

俺がある日『信長だ、信長だぜぇ!!』ってだんじりのてっぺんに登ってモリオの近所に来るわけだ。急カーブの遠心力にバランス取ったり、団扇みたいなの振り乱しながらな。

『ソイヤーソイヤーソイヤーソイヤー!!!信長ソイヤー信長ソイヤー!!』

皆で絶叫しながらもうめちゃくちゃな盛り上がりだよ。その間も俺はだんじりの頂点でのけ反ったり、ちょっとジャンプしたりしながらノリノリで向かってくるわけ。もうテンション上がりきって目もバッキバキでな。

で、その勢いに様子を見てたモリオもテンション上がってきて一緒にだんじりに飛び乗るわけよ。そして絶叫。

『ソイヤーソイヤーソイヤーソイヤー!!信長ソイヤー信長ソイヤーソイヤーソイヤーソイヤーソイヤー!!!!ソイヤーソイヤーソイヤー信長ソイヤー!!ねぎまソイヤー!!なんこつソイヤー!!』って声揃えてな。

で、さんざん盛り上がったあと俺は嵐のようにだんじりに乗って帰っていく。モリオはいやー良かった、やっぱり信長だなあ、なんて思いながら当日を楽しみにするわけ。

で、いざその日になったら急にめちゃくちゃさめた顔の俺が現れて『じゃあB駅にしようか。』とか言う感じだろ。』

そこまで苛立ちにまかせて一気にまくしたてると、黙って聞いていたモリオはこう言った。

『まあ、おおむねそんな感じだな。程度の差はあるとは思うが。』

そしてこう続けたのだった。

『もう少し正確に例えるなら…たとえばハンバーガーショップに行って…』

不毛な例え合戦はそこから五往復ほど続いた。


終わり(最後まで読む人いるのか?)

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1月27日(金)

相変わらずさえないアクセス数が続いているこのブログだが、昨日は珍しく訪問者が多かった。おそらくこないだの『友人の壮絶体験』というタイトルが効いたのだろう。このブログを知らないような人たちもとりあえず中身を確認したくなったんじゃないか。まあ中身はいたっていつもと変わらないのだが…。ここから一気に神メンバー入りしたいところだが、残念ながら今日はまたいつもの低アクセスに元通りのようだ。全く耐久性がない。せっかくのチャンスも一日たてば空気を抜いた風船のように一気にしぼんでいく。

きっと今後どれだけ更新を続けても『うさ子』や『えーちゃん』には勝てない。あの人たちはなぜあんなにも強いのだろう。なぜ数日更新が無くても一向に下がらないのだろう。まあ、それだけのファンがいるということか。

いつまでも神メンバーの背中を追うだけの毎日。うんざりしながらも、この甘ったるい絶望に浸っていたい自分もいたりする。

今日はこないだの雪の影響で二日分の入荷があった。昼前に出勤しても多すぎてまだ検品すら終わっていない。おかげで一日中品だしに追われることになった。

そういえば、五月からコロナが引き下げになりマスク着用が個人の判断になるという。ようやく店員もマスクなしで接客出来るのだろうか。

『これでやっとマスクはずせるわァ!ほんと暑苦しくて仕方なかったよねェ!アハハオホホ』

主婦メンバーたちが盛り上がっている。それを尻目に、俺はバックルームへ水分補給に向かった。

ペットボトルのお茶を一口飲むと、ふいに備え付けの鏡が目にはいった。なにげなく覗き込んで自分の顔をまじまじと見てみる。

目は落ち窪み、ほうれい線は以前よりも深く刻まれているように見えた。頬も明らかに垂れ下がってきている。

どこからどうみても40代の『おじさん』だ。

こんな顔を晒しながら働くくらいなら、もういっそのことずっとマスクしたままでもいいかなと思えてくる。唾が飛んだり、息が臭くなってないか心配するのも億劫だ。

とはいえ、流されやすい自分のことだ。マスクのない生活にもあっという間に慣れてしまうのだろう。

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1月25日(水)

休日。

布団から出るのが億劫になるくらいの寒さだ。窓から外を見ると昨夜と変わらず道路は雪に覆われていて、その上にいくつもの足跡がついていた。これは普通に歩くのも手間取りそうだ。今日がたまたま休みでラッキーだと思った。

そういえば、昨日車両内で軟禁状態だったホサカ(地元の友人)はどうなったんだろう?無事家に帰れたのだろうか。

LINEを送るとしばらくしてから返信があった。明け方にようやく車両からは解放され、極寒の中数十分かけて別の駅まで歩いたという。更にそこから電車をいくつか乗り換え、家に着いたのは午前8時だったそうだ。車両内は暑く、ほぼ一睡も出来なかったらしい。

予想以上に壮絶だ…思わず言葉を失ってしまった。

『駅まで他の乗客たちと歩いている時は正にこんな感じだったぞ』

その言葉とともに画像が送られてきた。

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これは…『北斗の拳』のワンシーンだ。テロップどおり皆完全に『明日を見失った』顔をしていたのだという。無理もないだろう。

『正に北斗の拳の世界だな。ほんとにお疲れ。ゆっくり休んでくれよ』

ホサカに労いの言葉を送るとまたすぐに返信がある。

『今回に限って言えば世紀末救世主は最後まで現れなかったな。』

それには返信せず、俺は駅前にコーヒーを飲みに出かけた。







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