破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2023年03月

今回の鹿児島旅行、文学館もさることながら夜に行った居酒屋が大当たりだった。

最近でこそそれなりに行けるようになってきたが、1人で知らない店に入るのは大の苦手である。わざわざ旅行に来ておきながら、気分が乗らない時はコンビニで食べ物を買い込んでホテルの部屋で済ませる、なんてことも一度や二度ではない。

今回もどうしようか散々迷ったのだが、せっかくなのでホテルの人におすすめしてもらった店に行くことにした。『予約しといたほうがいいですよ』とのことだったので、若干ビビリながら電話すると『はい、空いてますよー』とあっさり取れてしまう。これはもう腹をくくるしかない。

結果的にカウンターで2時間ほど滞在したのだろうか?店の人たちも感じがいいわ、食べ物も美味しいわで焼酎お湯割りが進む進む。会計の頃になるとすっかりベロベロで、レジでお金を払いながら『いやー最高の店に巡りあいましたよ!』などと店の人に話しかけている自分がいた。(店の人は若干引いていた。)

何よりおすすめボードに書かれていた「本日の焼き魚」。値段が書かれていないのでやや不安だったがこれがもう最高だった。この日はキンキの塩焼きだったのだが、丸々一匹出てきて味も絶品だった…。ホテルでコンビニ飯にしなくて本当に良かったと思う。

そして今、手元にはあの日のレシートがある。

20230317_231132

しっかり見てなかったけど『本日の焼き魚』、3000円もするやんけ!!まああれだけ美味しかったからその価値は十二分にあったな。


衝動的鹿児島旅行・完

20230215_135223

向田邦子が鹿児島にいたのは小学生の頃のたった2年間だという。

それでも『第2の故郷』と呼ぶほど生涯に渡って親しみを感じていたそうだ。

鹿児島近代文学館の向田邦子コーナーには私服やテレビの台本など、ゆかりの品々がたくさん展示されていた。どこかで公演した時の音声テープもあった。それらを見たり聞いたりしながら、しばらくの間物思いに耽っていた。

ここまではるばる来たものの、自分はそれほど彼女の作品に精通しているわけではない。『思い出トランプ』も『あ、うん』も昔目を通した気がするが、内容はきれいさっぱり忘れてしまった。しっかりと読んだのは『向田邦子ベスト・エッセイ』くらいだろうか。

images (47)

とはいえ、このエッセイ集がしみじみ良いのである。

中でもお気に入りは『鹿児島感傷旅行』という一篇だ。亡くなる数年前、当時の同級生たちと再会するために40年ぶりに鹿児島へ帰京したことを書いたものなのだが、このラストが何回読んでも泣けてくる。

以下、引用。

『あれも無くなっている。これも無かった - 無いものねだりのわが鹿児島感傷旅行の中で、結局変らないものは、人。そして生きて火を吐く桜島であった。帰りたい気持ちと、期待を裏切られるのがこわくてためらう気持ちを、何十年もあたためつづけ、高い崖から飛び下りるような気持ちでたずねた鹿児島は、やはりなつかしいところであった。~ 『眠る盃』(鹿児島感傷旅行)より

はあー、天才だなあ。しみじみ上手いなあ。こんな文章がいつか書けるようになりたいものだ。

まだまだこれからというところでの飛行機事故は悲しすぎたけれど、こうやって鹿児島の皆と再会出来たのは救いだったんじゃないだろうか。

20230215_145742

鹿児島近代文学館を存分に堪能した後は、天文館方面へ向かった。

さすが鹿児島一番の繁華街だ。平日の昼下がりにも関わらず大勢の人で賑わっていた。もう文学館が終われば旅の目的はほぼ果たしたようなものだ。甘めのスープが印象的な鹿児島ラーメンで小腹を満たした後は、休憩がてら1人カラオケに興じることにした。

images (48)

何曲か適当に歌い流し、H2Oの『想い出がいっぱい』を半泣きで熱唱した後は疲れてしばらく横になっていた。


(あとは大したこともないので気が向いたら書きます。)










3月28日(火)

今日はエリアマネージャー(以下AM)が店を訪れる日だった。

随分と久しぶりのような気がする。他の系列店をチェックしたり、本社で会議に出席したり何かと余裕がないらしい。出世するとそれはそれで大変なんだな、と当たり前のことを思う。金は増えるだろうが今度は使う時間がない。なんとも皮肉なものだ。

まあ、万年平社員の自分には関係のないことだが…。

数日前、訪店があることを他従業員に伝えると、主婦パートの1人は『わあ嬉しい!!』と声を上げた。

『エリアマネージャーカッコいいですよね~!わたし、目の保養だと思っていつもみてるんです!!』

そう言って体を弾ませてみせた。見ると彼女の頬はほんのり紅潮すらしている。結局顔かよ、いい年して何はしゃいでんだこの野郎と思ったが、『そうなんですね』と愛想笑いを返しておいた。

昼過ぎにAMは店に着いた。いつものように店内のチェックを一緒に行い、業務についての聞き取りを受ける。ひととおりが済むとちょっとした雑談の時間になった。

また今回もいくつかの系列店の話を聞いた。ある店の社員が心を病み使い物にならなくなってしまったこと、期待されていた若手社員がたった数年であっさり辞めてしまったこと、景気が悪く新入社員は例年よりぐっと少ない人数での採用になったこと…。

どこを取っても明るい話は無かった。

『こんな話ばっかりでうんざりするよ。忙しくて余裕ないし、まとまった休みがほんとに欲しいわ。』

そう言って疲れたように笑うと、AMはそさくさと帰っていった。この後は自分の店に戻って仕事をするらしい。

休憩時間になり外へ出ると随分暖かい。桜も既に満開だそうだ。友達を集めてのんびりお花見でも出来たら最高なのにな、と思った。

images (46)

3月26日(日)

最近あくまで体感的にだが、以前よりハードカバー本が売れている気がする。

なぜなのだろう?理由はよく分からない。

本も徐々に値上がりして、文庫とハードカバーの値段差に開きが無くなってきているからだろうか。高くても読みたい本をじっくり読む、という方向に意識が変わってきているのかもしれない。

まあ、自分は相変わらず金がないので文庫本をちまちま買い続けるだけだが…。

閉店前になりレジ締めの準備をしていると、アルバイト男子が話しかけてきた。そろそろ就活が始まるのだが、自分が何をやりたいのかさっぱり分からないという。色々調べていくうちに見えてくるんじゃないか、と月並みなことを言うと『破滅さんはすんなり就職決まったんですか?』と聞かれた。

『いや、全然…。』

今振り返っても後悔している。

自分はろくに就職活動をせず4回生の後期まで遊び呆けていた。やりたいことも特に無く、このまましばらく親のすねを齧りながらフリーターでいようとすら思っていたのだ。

そうやってダラダラ過ごしていた4回生の3月、いつものように夜更かしをしながらふとテレビをつけると、たまたま『フリーター417万人の衝撃』(NHK)なるドキュメンタリーが始まった。

細かい内容は覚えていないが、日本におけるフリーターの数が417万人にも上り、今後ますます増えていくであろうとその番組は伝えていた。そして、とある現役フリーターの男性に密着する。

男は就職出来ないまま年を重ね、バイトの安い給料で毎日をなんとか凌いでいるという。乱雑な狭いアパートの一室で袋入りラーメンを鍋から直接食べていたシーンが強烈に印象に残った。部屋は薄暗く、具の全く無いラーメンはどう見ても不味そうだった。

今思えば、薄暗い部屋も不味そうなラーメンも番組側の演出だったのかもしれない。しかし当時の自分はそれを見て、『これはヤバい!!』と猛烈に危機感を抱いた。このままフリーターになるのだけはやめよう、そう思い翌日から仕事を探し始め、たまたま新聞の求人広告に載っていたのが今の会社だったのである。

そこまでをかいつまんで話すと、アルバイト男子は『運命を変えた番組じゃないですか。たまたま観たのがそれで本当に良かったですね。』と言った。

『うん。だから俺みたいなどうしようもないのもいるからさ、まだまだじっくり考えてやりたいことを見つけていけばいいと思うよ。』

『はい、また相談させてください!』

アルバイト男子は帰っていった。優秀な大学に通う子だ、こちらは何ら心配する必要などないだろう。4回の終わりまで遊び呆けていた自分よりダメな奴なんてそうそういないのだから。

『間違っても書店員になんてなるんじゃないぞ。』

誰もいなくなった店内で俺はそう、ポツリとつぶやいた。

img_01



ダメだ、あれから数日経つがマエケンの狂言ボケが今頃になってツボにはまってしまった。

思い出すだけで顔がニヤけてくる。今日も仕事中に笑いを堪えるのに精一杯だった。

やたら上手いのがまた鼻につくんだよな笑。

しかし、狂言といい相変わらず掴み所のない不思議な人だ。マイペース?飄々?どう形容してもしっくりくるような、こないような。

・数曲歌って、『ワイチャイ』ツアーに来たことがある人に挙手をさせるマエケン。ほとんどの客が手を挙げると、『じゃあ曲変えましょうか!そのほうがいいっすよねー』と予定をサクッと変更してしまう。

・桜の季節ということで、歌詞に桜が出てくる『花と遊ぶ』、『看護婦たちは』。

・恒例のリクエストコーナーが今回もあった。客席からお題を頂戴し、それらを絡めた曲をその場で作りあげるというもの。今回は『ヤギ』、『サングラス』の2つで見事に即興曲を完成させていた。

・カバーは島倉千代子の『人生色々』、SPEEDの『ボディー&ソウル』をさわりだけ。「小・中学生くらいの子にこんな歌詞歌わせるから皆おかしくなっちゃいましたね。」

・そして随所でしつこく繰り返される狂言ボケ笑 しかし、ウケようがウケまいが全く動じずにやりきるところは、なんとなくハリウッドザコシショウを彷彿とさせた。

・「皆さんが私を見ているように、私も皆さんを舞台の上から見ているんですよ。」と突然言い出すマエケン。なぜかその時目が合ったような気がした。ひょっとしたら狂言ボケでうんざりしているのがバレたのだろうか笑 まあ、きっと気のせいだろう。

・今回も去年のツアー同様『ワイチャイ』収録曲をメインに選曲されていた。ただし、『サマースーツ』、『白い病院』、『みかん』はやってくれなかった。特に『みかん』をやらないのはめちゃくちゃ残念だった…。アルバムの中でも一二を争うくらい好きな曲だから。「なんかリクエストないすか?なんでもいいですよ。」と言われた時に思いきって叫べば良かっただろうか。

『みかん』のサビの歌詞が本当に好きだ。聴く度にもう会えない人のことを思い出して心をえぐられるから。

「写真はある 
 声も覚えている
 でもぬくもりは
 忘れてしまった」

ライブの終盤では今後が楽しみになるような告知もあった。きっとまた新しい歌を聴くために俺はマエケンのライブに行くのだろう。

20230325_200016





このページのトップヘ