破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2023年09月

9月24日(日)

いつの間にか随分と涼しくなった。もう夜だと半袖は肌寒いくらいだ。急激な変化で風邪を引かないように気を付けないといけない。

仕事の合間にアルバイトたちと話すと、彼らも学生なりに色々と忙しいようだ。

2回生男子のキモトくん(仮名)は来月から3ヶ月にわたってオーストラリアへホームステイに行くのだという。円安でお金の面では両親にかなり負担をかけてしまうと言いつつ、その顔は期待に満ち満ちているように見えた。

キモト曰く、ホームステイにおいては配属される家庭によって運命が大きく分かれてしまうのだそうだ。俗に言う‘ホームステイガチャ’というやつである。お金持ちで部屋も広い家族の場合もあれば、その反対もありえるそうで、『今からドキドキもんですよ…』とこぼしていた。

4回生女子のモリモトさん(仮名)は就職先も無事決まり、今は残された自由な時間を存分に謳歌している。サークルやゼミの仲間たちと共に、旅行や飲み会と大忙しのようだ。先日は就職先の集まりに参加し、新卒のメンバーとも意気投合したのだという。

『バッチリでした!やっぱりホワイト企業チェッカーやっといて良かったです!』

『ん、何それ…?』

聞きなれない言葉に首をかしげると、モリモトさんが分かりやすく説明してくれた。一言でいうと、ネットでその企業がブラックかホワイトかを診断してくれるのだそうだ。なるほど、そんな便利なものが今はあるのか。そりゃそうだわな。誰だってせっかく入った会社がブラック企業、なんて悲劇は避けたいに決まっている。

『でもその集まりで早速課題出されてて…。帰ったらレポート作らないといけないんですよ~』

苦笑いしながらモリモトさんは帰っていった。その背中をしばらく眺めながらふと思い出す。

昔B'zのラブファントムという曲の中で、『夢に向かい交差点を渡る 途中の人はいいね』という一節があった。当時は『途中の人って何だ?』とピンと来ていなかったのだが、今ならよく分かる。彼らこそが『途中の人』なのだ。

明るい前途が待っている彼らはとても眩しい。
目を背けてしまいたくなるほどに。

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9月22日(金)

休日。

心身ともに疲れきって一日中部屋で横になっていた。

待ち望んだ休みのはずなのに何一つやる気になれない。

シンクには汚れたままの食器が山積みになっている。

床はホコリだらけ。窓の側には取り込んだ洗濯物が畳まれることもなく放置されている。

ふと、腹が盛大に鳴った。そういえば朝から何も口にしていない。空腹で仕方ないが、それを満たすための準備すら面倒だ。

みっともないなあ。
何なんだろう俺の人生って。

とりあえず起きてなにかを始めよう。そうさっきから思っているものの、やはり体はピクリとも動かないのだった。

ふと思う。もしこの光景がクイズ番組にでも出題されようものなら…。

クイズ‘この光景は一体なに?!’

『ピローン!!!』
『はい早かったー。Bチーム、答えをどうぞ!』
『寂しい独身中年!!』
『ご名答!寂しい独身中年、正にその通り!10点獲得!!』

『いや、どんな番組やねん…』
かぼそい声でそう突っ込むと、俺は1人で少し笑った。頬を落ちる雫は汗なのか涙なのか、もうよく分からない。

おわり

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9月21日(木)

今日もまた残業で、いつもより大幅に遅れて帰りの電車に乗った。ここのところずっと同じような感じだ。帰ったらのんびりする暇もなく、すぐに寝る準備をしなければいけない。こんなことでまともなブログなど更新出来るはずがないのだ。

本当ならちゃんと毎日更新したい。でもそれがどうしても出来ない。昨日は疲れきって電車内ではずっとグッタリしていた。案の定1日更新しないだけで今日のアクセス数は地の底まで落ちている。全く、どうしてここまでしょほいのか。反吐が出るほどの雑魚ブログだ。

しかしここまでアクセス数や順位を気にしているのも俺くらいじゃないだろうか。他の方々は皆自分のペースでのびのびやっているように見える。楽しそうだし、肩の力が抜けていて文章も読みやすい。あくまで生活の一部にブログがある、という感じで…。きっと読む人もそんなブログのほうがよっぽど楽しいだろう。

俺は違う。ブログこそが生活なのだ。

24時間ブログのことを考えているし、ブログ抜きの生活はもう考えられない。だからこそ更新出来ない日は死ぬほど悔しいし、生きている意味が無いとすら思える。今も握りしめた拳から血を流しながらこのブログを書いている。

なぜ生きている?
そう問われたなら、ブログを書くためと答えよう。

なんのために生きている?
そう問われたのなら、一位を取るためと答えよう。

残念ながら自分の力不足でいまだ上位には全く食い込めていない。

なんども頂点に立った栄光の神メンバーたち、聞こえるかい?

なるべく働きたくないおっさん、
アロハみーこ、
ぶらり山谷、
最下層40代…

そこから見える景色はどんな感じだい?
全てを手に入れた気分は、どんなだい?

栄光のその裏で、頂点を極めた者だけが知る孤独と闘っているのかい?

俺にもいつか教えてくれよ。

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9月19日(火)

疲れがピークに達しているようだ。

昨日の夜もまた寝られなかった。暑さと睡眠不足でふらふらのままやっとのことで支度を終え、駅に向かう。あまりの暑さに身体が焼けるようだった。ふと、もう今日は誰とも話したくないな、と思う。

出勤し、朝メンバーたちに最低限の挨拶をして自分のブックトラッカーに向かう。検品を終えたトラッカーにはこんな日に限って山ほどの入荷商品が載せられていた。連休明けだから余計に多いのだろう。

マスクの下で盛大にため息をつく。果たして今日中に終わるのだろうか。出来ることならお客さんからの問い合わせも受けたくないな、と思ってしまった。

誰とも話したくない。
知らない人に声をかけられたくない。

こんな時頭をよぎるのは新入社員の頃の先輩、松下さん(仮名)のことだ。いつか、喫煙室でタバコをくゆらしながらあの人が言った言葉を思い出す。

『破滅くん、仕事は効率的に進めなマジでおわらんで。』

あれは最初の店に配属されて数ヶ月経った頃だっただろうか?当時俺は品出しがなかなか終わらず、残業ばかりしていた。

『丁寧に仕事を進めるのはええことやで。けど、全部それでいくと時間いくらあっても足らへん。抜くとこは抜かなあかんのや。』

『はい…どこを抜くんですか?』

『一番ええのは客からの問い合わせやな。もうな、あんなん無視したったらええねん。』

『え?無視ですか?』

予想外の返答に俺は言葉を失った。

『無視っつーと語弊あるけどな。さすがに‘すいません’言われたら無視出来へんよ?そんなんクレームになるやろ。だから、なるべく声をかけられへんようにするねん。客の少ないとこから品出しするとかな。で、誰か来おったらスッと他の売場へ行く。またそこでも誰か来たらスッ…ヒットアンドアウェイってやつや。』

『はあ…。』

『まあお前がどうしようが勝手やけど、そうでもせなマジで終わらんで。お前サービス残業ばっかりしてるやろ?どうせH店長は残業代なんかつけおらへんからな。そんなん時間勿体ないで。』

『はい…。』

2本目のタバコに火を点けると松下さんは言った。

『お前、メタルギアソリッドっていうゲーム知ってる?』

『はい、やったことはないですけど…なんか隠れるやつですよね?』

『そうや。あれと同じように考えたらええ。品出ししてるやろ?横目でチラッと見えるやん。いかにも声かけてきそうなジイさんとか。あんなんが見えた瞬間逃げろ。何にも気づいてない感じで、自然を装ってな。俺はこれを‘スネーク戦法’と呼んでいる。』

『え、でもなんかそのお客様に悪くないですか…?』

『だからそんなこと気にしてたら終わらんって言うてるねん。お前まだ入ったばっかりやからそんな風に思うんやろうけどな、どうせそのジジイも他の店員に声かけおるって。
ほんでまた聞いてくる内容もしょうもなかったりするやろ?NHKテキストはどこや?とかパズル誌はどこや?とか。しょうもないんじゃ!ちょっと自分で探せば分かるようなこと聞いてきやがって。気まぐれで聞いてきおるのが一番鬱陶しいねん。』

松下さんは忌々しそうにそう言うと、頭上に向けて煙を吐き出した。それが換気扇に吸い込まれていくのを眺めながら、俺は何が正しいのかよく分からなくなっていた。

『まあ色々言うたけど、スネーク戦法な。問い合わせからは逃げろ、や。分かったか?小島監督もあのゲームにそういうメッセージを込めたんや。』

『そんなわけないでしょう!』


注…書店員はお客様の問い合わせに真摯に対応する素晴らしい人たちばかりです。松下さんは頭がおかしいのです。

あれからもう何年たったのだろうか?松下さんはとっくの昔に書店員を辞めた。そして俺は、あの頃懐疑的だった‘スネーク戦法’を頻繁に実践している。

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9月18日(月)

9月も半ばを過ぎたというのに相も変わらず暑い日が続く。少し前に、11月まで同じような状況が続くとネットで見た気がするが正気だろうか?早晩秋という季節は消滅するのだろう。

シルバーウィーク最終日も客入りは今一つでレジが混むこともほとんどなかった。おかげで発注やその他諸々の作業に集中することは出来たのだが。

休憩が終わり、両替に行こうとレジに向かうとアルバイト主婦がこちらに向かって手招きをしていた。

『ちょっと破滅さんっ!来てくださいよ!!』

何事かと思い小走りで駆けつけると、アルバイト主婦は『これ見てください!』と興奮気味にレジのモニターを指差した。そこには『7777』という数字が表示されていた。どうやら先ほど購入されたお客様の金額がちょうど7777の‘ゾロ目’になった、ということらしい。

『凄くないですか、これ?!7が4つですよ!!いや~私こんなん初めてだわ~。驚いたわ~。こんな偶然あるんですねぇ!ビックリしましたもん!お客様に金額伝えるときちょっと声震えちゃったりして。ハーハッハッ!!いや~すごいわあハーハッハッ!!!』

ペラペラと…。何事かと思えばこんなことでハイになってんじゃねえよ。内心毒づきながらも『ハハハ、確かに綺麗に揃うと驚きますよね。』と嘘くさい笑顔で適当に返しておいた。

『ねえ!いや~珍しいわあ。たまげたわあ~。今日はいいこと起こりそうだわあ~。ハーハッハッ!!そもそもこのお会計の時私ね…』

アルバイト主婦はまだ何か話し続けている。たいそうおめでたいことだな、マスクの中でそう呟いたあと俺は両替に向かった。

今日も仕事を終えて帰りの電車に乗り込んだ。最近通勤中はずっと豊田道倫の新曲を聴いている。『アンダーグラウンド・ビーチ』と題されたこの新曲がとてもいい。歌ももちろんだが、アウトロのギターが絶妙だと思った。これがあるとないとできっと印象は全然違うのだろう。

買おうか迷っていたアナログベストも結局2枚とも注文してしまった。CDとダウンロードコードもついて1枚4400円。よく考えたら安いくらいだ。ジャケットも格好いいし、届いたら部屋に飾りたい。

https://youtu.be/i29S13aKHHs?si=Dz_9l9sIzrGI3Jyd

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