破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

2024年01月

1月31日(水)

数日前気になるニュースを見た。

コンビニでパスタなどに付いているプラスチックのフォークが有料になったのだという。それに絡めて、東京の独立系書店がブックカバーの有料化に踏み切ったことを伝えていた。その結果、カバーを希望する客は7割近く減ったそうだ。

厳しいな、と思うが仕方がないのかもしれない。今はまだ無料で提供しているカバーや袋もここ最近は値上がりが続いている。これらが書店の僅かな利益率を蝕んでいるのは事実だ。有料化の流れは今後チェーン系書店にも波及していくのではないか。

当たり前のことが当たり前ではなくなっていく時代か…。

割り箸やフォーク、袋にカバー、あらゆるものが有料になっていく時代。それは備品だけにとどまらないんじゃないか?

例えば駅のトイレ。海外旅行系YouTuberなどを見ると有料の国も既に存在するようだ。日本もいずれ同じ道を辿るような気がする。

金のない人間は排尿排便すら出来ない時代がすぐそこまで来ているのだろう。我慢の限界なのにトイレに入れず、半ベソで駅構内にクソを垂れ流す奴が出てくるかもしれない。ふと、財布を忘れてトイレに入れなくなった自分を想像してみる。

…なぁ、なんでなん?なんでボクうんこ出来へんの?こんなにお腹痛いのに、こんなに苦しいのに、なんでトイレ入られへんのぉ…?

『…さん、破滅さん…』

『は、はい!』

妄想はそこで断ちきられた。声の主は朝のパート主婦で、売場のことを質問してきたのだった。異動が決まってからというもの、ますます一人の世界に閉じこもるようになってしまった。もはや従業員と話すのも億劫になってしまっている。

『○○は入口すぐの平台に大きく展開しましょう。△△はワゴンで。拡材も来ているはずなので飾り付け派手にお願いします。』

『了解です!』

もっともらしい顔をして指示を出しているが、本当はもう全てがどうでもいい。

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1月30日(火)

休日。

1月ももう残りわずかだ。たった1ヶ月なのに随分と色んなことがあったような気がする。なんとも暗い気分になるニュースが多かった。

個人的にも来月からの異動のことで気分はずっと不安定だ。幾つもの懸念材料があり、仕事中のふとした瞬間にも思い出してあれこれ考えてしまう。

果たして今年はどんな1年になるのだろう。

喫茶店から帰宅し、掃除洗濯を一通りこなした後は昼飯の準備に取りかかった。冷蔵庫に放置していたキャベツや天かすを一斉処分するための『第三回孤独なタコ焼きパーティー』である(スパンみじかっ!)。

今回も主役のタコは高額のため不参加となり、代わりにカニカマやチーズ、ベーコンを刻んで入れることにした。そこに先日安く手に入った長いもも加えることにする。粘りのある長いもをすりおろして生地に入れると、ふわふわ食感になり実に旨い。

『ゆんまっっっ!!!』

うんまっっ!の最上級、ゆんまっっっ!!!が口をついて出た。しばらく夢中で食べ進め、残りはジップロックに入れて冷凍する。

長いも入りタコ焼き・・また一つ新たな扉を開けてしまった。いつものように地元の友人『モリオ(仮名)』にうざい高説を垂れてやろうとスマホを取り出す。途中まで文章を打ったが、現実の諸問題を思い出して急に面倒になり、結局は『長いもをすりおろしなさい』とだけ送ってしまった。

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1月24日(水)

いつも通り、だるい体を引きずりながら昼前に出勤するとパート主婦Iさんが近づいてきた。挨拶する間もなく話しかけてくる。

『破滅さん、異動するって本当ですか?』

きっと四回生バイトの清水さん(仮名)から聞いたのだろう。

『ええ、来月の半ばくらいになると思います。』

隠すようなことでもないので正直に答えると、Iさんは『そうですかー、寂しくなりますね。』と言った。お世辞とは分かっていても悪い気はしない。まあまあ、あと一月もないですがよろしくお願いしますと無難に返しその場を離れた。

入荷した商品が載せられたブックトラックを整理しながら、Iさんも随分と年をとったなと思う。自分がこの店に赴任した直後に採用されたから既に10年選手である。年齢は確か50代前半。こないだ話した時は最近身体の節々が痛くてたまらないとしきりにぼやいていた。

娘が二人いて、熱狂的なタイガースファン。シーズン中は度々甲子園に家族で応援に行くという。

そこまで考えて、二の句が継げなくなっている自分に気付いた。結局俺は10年も一緒に働いている人のことを何にも知らないのだ。もっと色んな話をしておけば良かったと今になって思うが、もう後の祭りだった。

そうこうしているうちに昼休憩の時間になった。

ロッカーからスマホを取り出し確認すると、元従業員・敏腕主婦LさんからのLINEが届いていた。来月の送別会の開始時間についての相談が書かれている。『ありがとうございます、それで大丈夫ですよ』と返信した後、ふと思い立ち『この送別会のこともブログにしっかり書き残したいと思います!』と軽口を叩いてみた。何も起こらないこのブログにとっては格好の大イベントである。ネタにしない理由はない。

向こうは休日なのか返事はすぐに返ってきた。

『いい加減URL教えてくださいよ。そうじゃないと徹底的に検索かけますよ~笑!』

仮にLさんが本当にこのブログを見つけたとしても一向に構わない。読まれて困るようなことは何も書いていないし、異動すればもう会うこともないのだ。何一つ支障はない。

ただ、悪ふざけで決めたブログのURLだけは見られたくないなと思った。何しろ『ハードセックスクレイジー』である。いやあんたハードどころかノーマルセックスすら何年もしてへんやないか!と突っ込まれても仕方がない。全くもって恥ずかしい限りだ。まあ、こんなどうしようもない話もLさんなら笑ってくれるとは思うが。

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1月22日(月)

今月三回目の連休。

異動を目前に控え、もはやヤケクソ気味に連休を量産させた今月だが、どれだけ休んでも気分は一向に晴れることはなかった。唯一分かったのは、なまじ時間があるとネガティブなことばかり考えてしまうということだけだ。

こんなことなら仕事をしていたほうがまだ幾分かましだったのかもしれない。特にやりたいこともない。遊びに行くにしても数少ない友人は皆働いている。旅行するのも気が進まない。観たい映画や展示も全くない。

それならあとは眠るだけだとただひたすら眠り続けた。夢の中で昔の知り合いに会ったような気がした。何か話したような感覚はあったが、目を覚ました頃にはすっかり忘れてしまっていた。

ぼんやりした頭でスマホに手を伸ばした。何の気なしに独身カテゴリーランキングを上からチェックしてみる。いつの間にか随分人が減ったように感じた。数年前まではあれほど盛り上がっていたこのカテゴリーも去年から活動休止や更新ストップが相次いでいる。新しいメンバーも増えることはなく、過疎化は進む一方だ。

理由は各々あるのだろうけど、一番は皆書くことがなくなってしまうんじゃないか。それでしばらく放置していると、そのままズルッといってしまう…みたいな。

分かるような気もする。そもそもが一般人の日記ブログなのだ。毎日何か特別なことが起こるわけもない。無理やりネタをひねり出すことも可能だろうが、そんなことをしているとある日ふとこんな思いに囚われるのだ。

『こんな何も起こらない日記、誰が興味あるの?』と。

無理もないだろう。現に俺が今同じことを思っているのだから。

飽き飽きしてるんだよ、このクソつまらない毎日に。

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1月21日(日)

最近通勤中はずっとカーネーションの去年出たアルバム『カルーセルサークル』を聴いている。

本っ当にいいアルバム!聴けば聴くほど良さが染み込んでくるような気がする。直枝さん今いくつなんだろう?ほんといつまでたっても枯れないなあ。ここ数作はほとんど聴けていなかったけど、これを機に遡って聴いてみようかしら。

この日もあれやこれや残った仕事をこなすうちに時間は過ぎていった。最優先事項は直木・芥川賞のコーナー商品注文だ。受賞作はほどなく重版がかかるからいいとして、既刊の注文をしなければいけない。特に万城目学は作品数が多く、なおかつ売れるだろうからしっかり揃える必要がある。今回の受賞、個人的には今さら?という感じだ。キャリアも長く、ずっと売れ続けている人なのでもう受賞しているものだと勝手に思ってしまっていた。

本人のツイッターを見ると、受賞直後に仲の良い作家たちと撮った記念写真がアップされている。森見登美彦、綿矢りさ、ヨーロッパ企画上田…と錚々たるメンバーだ。この写真を見た誰もがこう思ったんじゃないか。

『綿矢りさ、めちゃくちゃ可愛いやんけ!!!』と。

元々綺麗な人だがこの写真の可愛さは異常だと思う。そういえば今回の芥川賞受賞者も、何回か前の高瀬準子も綺麗な人だった。ルックスにも小説の才能にも恵まれて、本当に羨ましい限りだ。

休憩に入りスマホを確認すると元従業員『敏腕主婦Lさん』からLINEが届いていた。来月の送別会の店を決めてくれたのだという。すぐに『ありがとうございます!』と返信を送る。

メンバーはLさん、俺、卒業する四回生バイト二人、現役バイトケンタロウ君の五人。きっとこの会が終わり異動が完了すれば二度と顔を見ることはないのだろう。少し寂しいが、楽しい会になればいいなと思った。

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