5月23日(木)
相変わらず厳しい売上げが続いている。
売れる売れない以前に店内に人がいないのだ。皆どこへ行ってしまったのだろう。5月もあと数日足らずだが、このままでは目標売上げにはとてもじゃないが届かないだろう。
紙の高騰で今後更に本の値段は上がると言われている。今でさえ高いのに、これ以上上がれば一体どうのってしまうのだろうか。
明るい兆しは全く見えない。
ふと、最悪の未来を想像してみる。このまま売上げが下がり続ければ、当然店を維持できなくなる。最終的には店が潰れ、パートバイト達はそのまま放り出されてしまうだろう。社員はまだ系列店に異動という道があるが、いつかはそれにも限界が来る。
店が無くなり続け、異動先すら無くなってしまったとしたら?ある日マネージャーあたりに肩を叩かれて、こんな風に通告されるのかもしれない。
『破滅くん。キミ、パートに降格だぴょん♪』
数年前まではただの笑い話だったが、もはやありえない話ではあるまい。
品出しも注文も全て終わった。パソコンの画面を見続けるのにも疲れ、店内をぐるりと一回りしてみる。お客は時代小説を立ち読みする老人と絵本を選ぶ親子のみだ。
どうすればもっと人が集まる店に出来るんだろうか。
何度も繰り返している問いだ。こんな時、いつも新人の頃先輩『松下さん(仮名)』に言われた話を俺は思い出す。いつかの休憩時間、テナント専用の喫煙所でうまそうにタバコをくゆらせながらあの人は言った。
『破滅くん、本を売るために一番大事なことって何か分かるか?』
『えっ…そうですね、やっぱり売れる本をちゃんと仕入れること…ですかね?』
『まあもちろんそれも大事やけどな。結局一番は店の立地やねん』
意外な答えに俺は驚く。松下さんは続けた。
『もちろん売れ筋揃えて売場しっかり作り込むことも大事や。あとは接客のレベル上げてめちゃくちゃ感じ良い対応したりもな。まあそれもええやろう。けどな、どんだけそのへんを強化しても限界があるねん。それ以前の問題やねんな。結局なあ、客がいっぱい来る場所に店がないと始まらんやろ?』
『はあ…そんなもんですかね』
『分かりやすく言うたらな、無人島でONE PIECEの新刊を数百冊仕入れても意味あらへんやん?そういうことや』
今になって俺は思う。
松下さんは何一つ間違ったことは言っていなかった。
けれど残念ながら立地は変えられないわけで、今の場所のまま売上げを回復させるには何をすればいいのか?それをずっと考えている。
相変わらず厳しい売上げが続いている。
売れる売れない以前に店内に人がいないのだ。皆どこへ行ってしまったのだろう。5月もあと数日足らずだが、このままでは目標売上げにはとてもじゃないが届かないだろう。
紙の高騰で今後更に本の値段は上がると言われている。今でさえ高いのに、これ以上上がれば一体どうのってしまうのだろうか。
明るい兆しは全く見えない。
ふと、最悪の未来を想像してみる。このまま売上げが下がり続ければ、当然店を維持できなくなる。最終的には店が潰れ、パートバイト達はそのまま放り出されてしまうだろう。社員はまだ系列店に異動という道があるが、いつかはそれにも限界が来る。
店が無くなり続け、異動先すら無くなってしまったとしたら?ある日マネージャーあたりに肩を叩かれて、こんな風に通告されるのかもしれない。
『破滅くん。キミ、パートに降格だぴょん♪』
数年前まではただの笑い話だったが、もはやありえない話ではあるまい。
品出しも注文も全て終わった。パソコンの画面を見続けるのにも疲れ、店内をぐるりと一回りしてみる。お客は時代小説を立ち読みする老人と絵本を選ぶ親子のみだ。
どうすればもっと人が集まる店に出来るんだろうか。
何度も繰り返している問いだ。こんな時、いつも新人の頃先輩『松下さん(仮名)』に言われた話を俺は思い出す。いつかの休憩時間、テナント専用の喫煙所でうまそうにタバコをくゆらせながらあの人は言った。
『破滅くん、本を売るために一番大事なことって何か分かるか?』
『えっ…そうですね、やっぱり売れる本をちゃんと仕入れること…ですかね?』
『まあもちろんそれも大事やけどな。結局一番は店の立地やねん』
意外な答えに俺は驚く。松下さんは続けた。
『もちろん売れ筋揃えて売場しっかり作り込むことも大事や。あとは接客のレベル上げてめちゃくちゃ感じ良い対応したりもな。まあそれもええやろう。けどな、どんだけそのへんを強化しても限界があるねん。それ以前の問題やねんな。結局なあ、客がいっぱい来る場所に店がないと始まらんやろ?』
『はあ…そんなもんですかね』
『分かりやすく言うたらな、無人島でONE PIECEの新刊を数百冊仕入れても意味あらへんやん?そういうことや』
今になって俺は思う。
松下さんは何一つ間違ったことは言っていなかった。
けれど残念ながら立地は変えられないわけで、今の場所のまま売上げを回復させるには何をすればいいのか?それをずっと考えている。










