10月3日(月)

休日。

溜まった洗濯物を干していると地元の友人『ホサカ』からLINEが届いた。開くと「Eのやつ、またこんなん送ってきたよ。金あるなあ」と書かれている。

Eはホサカと共通の知り合いの男だ。続けて転送されてきた数枚の画像には、Eの3人の子供達がどこかのテーマパークで楽しそうに遊んでいる姿が写っていた。

『もうこいつの写真とか転送しなくていいよ。鬱陶しいだけだから』とホサカに返信し、画像も削除する。あの野郎相変わらずこんなことやってんのか、と呆れてしまった。

Eは自分の高級車や高そうな食事、子供らの写真などをことあるごとに送りつけてくるのが常だった。こちらがそれに返信しても毎回既読スルーで何の言葉も返ってこない。要するにこいつは自慢がしたいだけなのだ。

この一方的な態度に毎回苛立っていたので、数年前にLINEはブロックしている。最後に会ったのはもう何年前になるだろう。

Eは誰もが知る国立大学を卒業し、現在は地元の大病院に勤めている。給与は一般のサラリーマンより遥かに多く、子供達を何不自由なく育てていると聞いた。最後に何人かで飲みに行った時、満足そうな表情で『悩みとか全然ないなあ。』とこぼしていたのを今も覚えている。

洗濯物を全て干し終わり、そういえばこいつの結婚式も凄かったなあと思い返した。もう15年前のことになるだろうか。まだ皆20代半ばのことだ。なぜか大して親しくもない自分にも声がかかり、当時は結婚式に出席したことも殆ど無く興味本位でOKしてしまったのだった。

当日、初めて体験する結婚式の料理を堪能していると司会者が言った。『ではここで新郎新婦の出会いから結婚までをまとめたVTRを流します。なんと新郎が自ら作られました!!』

会場にどよめきが起こる。へえ、自分で?!こういうの会場のスタッフが作るんじゃないの?すごいねぇ!!

場内が暗転し、前方に大きなスクリーンがゆっくり下りてきてVTRがスタートした。スクリーンには『image』という単語がでかでかと表示され、その下部分にテロップが流れ始めた。

『ねえ、想像してごらん?君と僕の幸せな未来をさ…。ねえ想像してごらん?僕たちが、初めて会ったあの日のことをさ…。』

何キモいこと言ってんだこいつと思ったが、意外にも映像はよく出来ていた。VTRの内容はEが奥さんとの思い出の場所を巡り歩くものだった。初めて会話をした場所、初めてデートをした場所、告白した場所…場面が切り替わる度にナルシスティックなテロップが出るのは辟易したが、素人とは思えない編集でそこは感心した。

つづく

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