12月28日(水)

今年も残すところあと数日となった。

年内の入荷も今日で最終だ。明日からしばらくは出版社や取次も休みに入り休配となる。この期間は店内の大掃除、窓ガラスの清掃、バックルームの粗大ゴミ処分など、普段は出来ていないことにあてようと思う。

難航していた来月のシフトもようやく完成した。残念ながら正月三ヶ日は見事に全て出勤となってしまった。毎年のことだがこの時期は皆休み希望を出すため、ギリギリの人員で回すのが常だ。まあそりゃ正月くらいは彼らもゆっくりしたいだろう、しかし…。予想はしていたがやはり内心はガックリきている。

まあ仕方がないじゃないか、別に休みだったとしてもやることは特に無いし。とはいえ、こちらが必死に働いている時にのんびりテレビでも観ながら笑っているパートたちを想像すると、苛立ちが募ってくるのも事実だった。三ヶ日は無理だとしても、どこかで連休が取れないものだろうか?

改めてシフトを眺め、とある1日に目星をつけた。これは、もしかしたらいけるかもしれない…。俺はコミックの品出しをしている主婦Zさんに歩み寄った。

『すいませんZさん、ちょっと大事な話があるんですが…』

『え、何ですか?!』こちらの剣幕に気圧されたのか、Zさんは明らかに動揺している。

『はっきり言ってね、どうしても正月休みが取りたいんですよ。』

『ハーハーハッッ!!直球ですね笑』Zさんは豪快に笑った。

『はい、直球です!なので、◯◯日の朝入れませんか?!』

交渉には余計な小細工はせず、ストレートにいったほうがうまくいく場合もあると聞く。

『ええ、大丈夫ですよー。怖い顔してるから私何かやらかしたかと思いましたよーハーハーハッ!!』

交渉成立。ネゴシエーター、今回も勝利である。

大げさすぎるくらいのアクションでお礼を言いZさんに深々と頭を下げる。ふと、Zさんの笑い声になんとなくデジャヴを感じた。何だろうと思い返すと、幼い頃に観たドリフのおばちゃんの笑い声と全く同じことに気付いたのだった。

無事、連休を勝ち取ることができた。そうと決まればもうこの場に用はない。いまだドリフ笑いを続けているZさんを無視し俺は品出しに戻っていった。

『ハーハーハッ!!!』

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