6月29日(木)その②
連休2日目。
夕方から久々に地元の友人『モリオ(仮名)』と落ち合い飲みに行った。モリオが指定したのはコロナ前にはよく一緒に行っていた安居酒屋だった。乾杯し、まずはいつも通りお互いの近況報告となる。
数ヶ月ぶりに会うモリオはあからさまに疲れていた。髪は無造作に伸び顔にも随分肉が付いたようだ。心なしか吹き出物も増えたように見える。何でも勤務先のホテルのオーナーが変わり、状況が一変してしまったのだという。
コロナ禍が落ち着きジリ貧だった宿泊客も戻りつつある。だが、いまだ予算は達成出来ない月が続いており、オーナーから毎日どやされているそうだ。
『マジでしんどいわ、今。改善策を出せ出せって毎日言われてな。おまけに人手不足で早朝にレストランの手伝いまでしてるから。終わってる。』そう力なくぼやくと、モリオは残っていた巨峰チューハイを一気に飲み下した。
破滅はどうなの?と聞かれてこちらも近況を伝える。
最重要メンバーの退職が決まり8月からはろくに連休も取れそうにないこと、後任は募集しているが一向に応募はないこと、婚活は結局何一つうまくいかなったこと…。
お互い境遇は全く違うが、景気のいい話は何一つなさそうだった。
『ただ、来月やろうとしてることはある』
そこで俺は24時間ブログのことをかいつまんで話した。モリオは黙って聞いていたが、こちらが話し終わると『でも、ブログって一個一個の文章量結構多いんだろ?ほんとに24連続とか可能なの?』と言った。
『大丈夫、ネタが切れたら一言とかで済ませるから。“ケチな男は本当無理ーーー!!”とか』
『ん…何それ?』
『知らんのかよ。俺の所属してるカテゴリーで不動の1位をキープしている伝説的人物よ。1年以上更新がないのに一切ランキング落ちないからな。その人の最後の叫びがこれ。“ケチな男は本当無理ーーー!!”』
通りかかった店員がビクッとこちらを見た。気付かないうちに声のボリュームが上がってしまったようだ。
『まあそれはともかく、ほんとにそのランキングは毎日神メンバー達がしのぎを削ってるわけよ。今日なんか“うさ子”と“ぶらり山谷”が2位を巡ってデッドヒートを繰り広げてたからな。俺にとっては全盛期のジャンプの連載陣くらい神がかった顔ぶれだわ』
話しているうちにボルテージが高まっていくのを感じる。しかし、こちらが興奮気味にまくしたてるほどモリオの顔は白けていくように見えた。
『ふーん…まあよく分からんけどそんな強いメンバーにほんとに勝てる可能性あんの?なんにせよ、熱中出来るものがあるならいいんじゃない』
モリオはそれだけ言うと財布を取り出し立ち上がった。『ま、今日はそろそろ行こうか。明日も朝からレストランだから、俺』
見下ろす彼の目に哀れみの色が浮かんでいるように感じたのは、こちらの気のせいだろうか。

連休2日目。
夕方から久々に地元の友人『モリオ(仮名)』と落ち合い飲みに行った。モリオが指定したのはコロナ前にはよく一緒に行っていた安居酒屋だった。乾杯し、まずはいつも通りお互いの近況報告となる。
数ヶ月ぶりに会うモリオはあからさまに疲れていた。髪は無造作に伸び顔にも随分肉が付いたようだ。心なしか吹き出物も増えたように見える。何でも勤務先のホテルのオーナーが変わり、状況が一変してしまったのだという。
コロナ禍が落ち着きジリ貧だった宿泊客も戻りつつある。だが、いまだ予算は達成出来ない月が続いており、オーナーから毎日どやされているそうだ。
『マジでしんどいわ、今。改善策を出せ出せって毎日言われてな。おまけに人手不足で早朝にレストランの手伝いまでしてるから。終わってる。』そう力なくぼやくと、モリオは残っていた巨峰チューハイを一気に飲み下した。
破滅はどうなの?と聞かれてこちらも近況を伝える。
最重要メンバーの退職が決まり8月からはろくに連休も取れそうにないこと、後任は募集しているが一向に応募はないこと、婚活は結局何一つうまくいかなったこと…。
お互い境遇は全く違うが、景気のいい話は何一つなさそうだった。
『ただ、来月やろうとしてることはある』
そこで俺は24時間ブログのことをかいつまんで話した。モリオは黙って聞いていたが、こちらが話し終わると『でも、ブログって一個一個の文章量結構多いんだろ?ほんとに24連続とか可能なの?』と言った。
『大丈夫、ネタが切れたら一言とかで済ませるから。“ケチな男は本当無理ーーー!!”とか』
『ん…何それ?』
『知らんのかよ。俺の所属してるカテゴリーで不動の1位をキープしている伝説的人物よ。1年以上更新がないのに一切ランキング落ちないからな。その人の最後の叫びがこれ。“ケチな男は本当無理ーーー!!”』
通りかかった店員がビクッとこちらを見た。気付かないうちに声のボリュームが上がってしまったようだ。
『まあそれはともかく、ほんとにそのランキングは毎日神メンバー達がしのぎを削ってるわけよ。今日なんか“うさ子”と“ぶらり山谷”が2位を巡ってデッドヒートを繰り広げてたからな。俺にとっては全盛期のジャンプの連載陣くらい神がかった顔ぶれだわ』
話しているうちにボルテージが高まっていくのを感じる。しかし、こちらが興奮気味にまくしたてるほどモリオの顔は白けていくように見えた。
『ふーん…まあよく分からんけどそんな強いメンバーにほんとに勝てる可能性あんの?なんにせよ、熱中出来るものがあるならいいんじゃない』
モリオはそれだけ言うと財布を取り出し立ち上がった。『ま、今日はそろそろ行こうか。明日も朝からレストランだから、俺』
見下ろす彼の目に哀れみの色が浮かんでいるように感じたのは、こちらの気のせいだろうか。


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