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カップルの話は続いた。盗み聞きするつもりもないのだが、真横なので嫌でも耳に入ってくる。

話題は寿司を食べたあとの行先に移ったようだった。

当初の予定通りにしようと勧める彼氏に対し、彼女は暑いからもう歩きたくないとしきりにゴネている。そして、やや期限を損ねている様子の彼氏にこうささやいた。
『外暑いもん。カップルで行けるスパでも行っちゃおうよ。トウマと裸の付き合いしたいなあ…。』

『グフッ』トウマと呼ばれた彼氏は下卑た笑いを浮かべると、『確かに、それも悪くないな』と言った。

『なんだお前らー、もうイチャイチャするつもりか?』もう片方のカップルの男がそう突っ込むと女たちの甲高い笑い声が上がった。

帰る客はおらず、行列はまだまだ進む気配を見せない。俺はこの店を昼飯に選んだことを後悔した。旨そうに寿司を頬張る親子連れ、孫を笑顔であやす祖父母、楽しそうなカップルたち…どれももう自分には一生縁のないような存在に思えて気分がどんよりと曇っていくのを感じた。

数十分後、ようやく案内された席で食べた寿司はそんな気分のせいなのか、うまいのか不味いのかもよく分からなかった。

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