破滅に向かって~書店員日記~

アラフォー独身書店員のブログです。 よろしくお願いいたします。

カテゴリ: 音楽


9月6日(土)


今日もようやく仕事が終わった。売上はまずまずといったところだろうか。9月になった途端ガクッと客数が下がってしまったのでここから徐々に取り戻していきたいところだ。


日中はまだまた暑いが、夜はだいぶ涼しくなってきている。駅までの道を歩いているとどこからか鈴虫の無く声が聞こえた。もう秋がそこまで来ているのだろう。


まあ月並みな感慨はいいとして、最近のとどまることの無い物価高にはいよいよ参っている。昼休憩は職場向かいのスーパーで弁当を買うことが多いのだが、遂に500円で買えるものが無くなってしまった。割引シールが貼られてようやく540円。それだけではとても腹は満たされないので菓子パンも追加し、ペットボトルのお茶も必要なのでトータルでは700円は簡単に超えてしまう。そろそろ水筒の導入を本気で検討しないといけないようだ。


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辛気臭いことばかり考えないといけなくてほとほとうんざりする。



話は変わって、スカパラと稲葉浩志が組んだ『Action』を聴いた。ネットニュースで知った時から楽しみにしていたコラボだ。5,6回聴いた感想としてはなかなか良いかな、という印象(偉そうに‥)。アクションというタイトルといい、ほんのりB'Zっぽい歌メロといい、稲葉が歌うことをかなり意識して作られているような気がした。まあコラボなのだから当然か。

だが、結局のところ稲葉を一番上手く料理出来るのはやはり松本しかいないのだろうな、という気がしている。無性にB'Zを聴き直したくて仕方がない。

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7月19日(土)

気が付いたら夏休みが始まっていたらしい。

全く呆れるくらいの早さだ。何をする気も起こらず部屋で寝転がっているうちに子どもたちは一学期を終えてしまった。

夏休み初日の売場は多くの家族連れで大変な賑わいを見せていた。 聞こえてくるのははしゃぎまわったり泣き叫んだりする子どもらの声。ふと、あんなにも感情を爆発させることはもう俺の人生にはないんだろうな、と思う。

来月からは本格的に棚卸しの準備が始まる。そしてそれが終われば間髪入れず売場の大幅リニューアルになだれ込むのだろう。考えただけで頭を抱えたくなってくる。今でさえ毎日疲れ切っているのに果たして俺の体は持ってくれるのだろうか。まあ、たとえどうなろうと絶対に無理はしない。休みは必ず週2回を死守するし、過剰な残業も絶対にするつもりはない。結局他人は他人でしかないのだから。たとえ俺が本当の窮地に陥ったとしても、会社や同僚は助けてくれないだろう。所詮誰しも自分のことしか考えていない。自分を守るのは自分しかいないのだ。


ここ数日、かなり久々にくるりの『図鑑』を聴き返している。もう25年も前の作品だが、いまだにこのアルバムの切れ味は全く錆びついていない。2025年の今もかっこいいままだ。

このアルバムがリリースされた2020年当時、俺はまだ高校生だった。高校生!?全く信じられない。本当にそんな瞬間が存在したのだろうか、という感じだ。いつの間にどれだけ遠くまで来てしまったんだのだろう。

『図鑑』は25年経ってもいまだに古くならない。けれど俺はすっかりしょぼくれた中年になってしまったよ。
不思議だね、流れた時間は同じはずなのに。

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6月16日(月)

オール遅番4日目。

あまり眠れていないはずなのに何故か明け方に目が覚めてしまった。最近こういうことが多い。もう着実に身体が年老いてきているということなのだろう。つくづく年はとりたくないものだと思う。

現在の勤務店は土日に売上が集まるタイプのため、月曜日は来客も特に少なくなる。とはいえ決して暇ということではない。品出しはいつもと変わらない量が届くし、先週分の販売データを確認して注文することも大事な作業だ。週間ランキングの変更も行わなければならない。それらが終われば翌日の入荷のために場所を作っておく必要もある。要するに毎日やることは山ほどあるということだ。

今日はとにかく『MUSICA』最新号入荷、これに尽きる。少し前から予約が立て続けに入り、もしや‥と思って調べてみるとやはり藤井風が表紙だった。驚くべきはその入荷量だ。普段の10倍近くの冊数が入ってきて(こんなことは他のアーティストの時ではありえない)、それらが開店と同時にバタバタと売れていったのだという。昼前に出勤し品出しをしながらチラチラとレジのほうを見ていたが、購入する人たちはほとんどが30代以上の女性のようだった。

俺は藤井風のことをほとんど知らない。曲も何曲かしか知らない。だがこれほどまでに人を夢中にさせる何かが彼の音楽にはあるのだろう。帰ったらYouTubeでMVを観てみようか、そんなことを思った。



今日もまた色々残業がありいつもの電車に乗れなかった。ヘトヘトになって帰宅すると、睡眠不足とあまりの暑さのせいで限界が来たのだろう、食事の途中で気づかないうちに寝落ちしてしまっていた。

生活は荒れていくばかりだ。








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6月11日(水)

ようやく連勤も終わって今日明日は休み。

毎度のことながら疲れた…オール遅番の連勤は本当にしんどい。特に後半。布団に入る時間もどんどんずれこんで、おまけになかなか寝付けなくて翌朝はフラフラになって出勤する羽目になる。昨日も休憩中寝落ちして完全に意識を失っていた。もう少し早く帰れたら楽なのだがレジ締めをする人がいないのだから仕方がない。

こんな生活にはもううんざりだ。まあ、もっと遅い時間帯で連勤を強いられている人もいるのだろうけど。


当然自炊をする余裕など一切無く、帰宅後はスーパーの割引弁当や総菜でサクッと済ませることになる。YouTubeやAmazonプライムを観ながらそれらを放り込んでいる時がごくわずかな心落ち着く時間だ。

最近はとにかくアニメ『チ。』、これに尽きる。Amazonプライムで新たなエピソードが開放される度に観ているのだが、もうめちゃくちゃに面白い。漫画は店でも以前から売れていて興味はあったのだが、試しにアニメ版を観たらガッツリとハマってしまった。思わず目を背けたくなるような残虐なシーンも多いのだが、地動説が迫害を受けながらも継承されていくのはスリリングで、続きが気になって仕方がない。

そして、観た人は誰もがこう思うだろう。『ノヴァク死ね!さっさとくたばれ!!』と。けど全然死なないんだなあ、こいつが。

あとサカナクションの主題歌『怪獣』がこれまためっちゃくちゃに良い!原作をふまえた歌詞といいドラマティックなサビといい、期待に100%応えた最高のプロ仕事じゃないかこれ。最近名前を聞くことが少なくなっていたけど、やっぱりサカナクションこそがキングだ。凡百のバンドが束になってかかっても敵うわけがない。

『チ。』&サカナクション、最高!!

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5月6日(火)

Oのミスチル話が一段落したあたりで、国道を走っていた車がパッタリと動かなくなった。どうやら渋滞に巻き込まれたらしい。ゴールデンウィークの最終日、皆早めに帰宅することにしたのだろうか。

『あー、別のルートにしときゃあよかったわ。まだまだ混まへんと思ってたのによぉ』

Oはそう言うと盛大に舌打ちをかました。車は遅々として一向に進む気配を見せない。そのうち俺もOも全く言葉を発さなくなってしまった。窓の外は依然として雨が降り続けている。



しばらく無言の時間が続いたところで、ふいにOが口を開いた。

『そういやさぁ、俺今月誕生日やねん』

『あー‥』

そういえばそうだったな、と思い出す。友達の誕生日など普段はほぼ意識しない。

『もう44やで。ほんっまに年とったわ』

何気なくOの方を見ると、今まで見たことのないような疲れた顔をしていた。

『もうちょい精神的に成長してると思ってたんやけどなあー』

前の車が数メートルだけ前進する。それに合わせてOも距離を詰めた。

『結局なーんも変わらへんかったわ。感覚的には20代とそんなに変わってへん。なのに身体は完全に中年になってなあ。みんなそんなもんなんかなあ?』

Oの顔にはなんの感情もこもっていなかった。悲しみも怒りも諦めも、全てをどこかに置きざりにしてきたような顔をしていた。それを見て、俺は何も言うことが出来なかった。

いつの間にこんなに時間が流れてしまったのだろう。こんなにも遠くまで来てしまったのだろう。何も気にせず笑えた20代の頃に戻りたかった。

ちょうどそこでOのカーステレオから新たな曲が流れ始めた。淀みきった空気には似つかわしくない賑やかなイントロ。これは・・・

槇原敬之『どうしようもない僕に天使が降りてきた』じゃないか。

マッキーの曲の中でもトップクラスに好きだった曲だ。今度は俺が歌う番だった。全開のテンションで、声を張り上げながら。


“はしるきぃみの髪でぇしゃァつでェ〜

ゆれぇるたくゥさんのしぃろぉいはぁねェ〜

きみはきっとどぉしょおもぉなぁいぃ〜

ぼくにおりてきたてんすぃ〜 ”


結局。

俺のもとに降りてきた天使はいなくなってしまったけれど。

もうずっとこのままかもしれないけれど。


フルテンションで最後まで歌い上げた俺を、Oが半ば呆れた様子で見ていた。

『いきなりビックリするわ、お前。さっきまで押し黙ってたのに』

『いやまあ、中学の頃マッキーで一番好きな曲だったから』

『ふーん。そういえばマッキーって言うたら1個思い出す話があってさあ・・』

きっとまた“あの話”をするのだろうな、と俺は思った。







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